第7回企業フィランソロピー大賞
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◆ 大賞
中村ブレイス株式会社
≪贈呈理由≫
かつて江戸時代に石見銀山で栄え、今や過疎の町と化した島根県大田市大森町に本社を構える同社は、義肢装具を作る会社である。この事業は、「経営とは社会貢献そのものである」という経営理念の具体化にほかならない。
製品技術を世界最高水準にまで高めることで、事故や病気で失った身体機能を単に物理的に補うための義肢装具づくりに留まらず、使用者の自己尊厳まで回復させる製品を世に送り出している。その代表例が人工乳房。同社の次の製品目標は、すでに商品化されている人工肛門装具をさらに改良し、わが国に多い大腸がん患者の苦しみを少しでも和らげることだという。
義肢製作にアートの概念を取り入れ、優れた機能性と美しさを兼ね備えた同社の手足や指や耳や鼻によって救われた人たちからのお礼状やエピソードは枚挙にいとまがなく、大やけどで両足を失ったモンゴルの少年に義足を贈るなど、海外にも及んでいる。一方で、ひとづくりの原点は、過疎の町を世界中から人の集まる町、人に喜んでもらえる町にしたいという思いにある。質の高い仕事ができるひとを育て、世界から島根の大森に来てもらえるような製品を作り、世界を相手に商売するという夢を掲げる同社は、多くの若者が地元で働き、成長し、家庭を持つことができるようにという願いから、大森町内の伝統的な町並みに建つ家を何軒も引き取っては改修し、従業員の寮や社宅、あるいは店舗にしている。従業員や家族の福祉に資すると同時に、町並み景観の保存にも貢献している。 そのフィランソロピー精神に根ざした企業経営は、高く評価されるものである。
(注)社名の「ブレイス」(brace)は、英語で「(人)を支える、元気づける」の意。
≪活動内容≫
過疎の町で、義肢装具開発を基盤にしたものづくり・ひとづくり活動
◆ 特別賞/いのちの架け橋賞
飯田電子設計株式会社
≪贈呈理由≫
プリント基板の製造販売から始まり、指で触れるだけのメンブレンスイッチ(シートスイッチ)メーカーである同社が、街かど救急隊と名づけた広告付AED ボックス無料設置事業を始めたのは、2007 年のことである。全国で約100万台必要と言われているこの装置が、まだ22万台程度しか普及していない理由は、本体およびメンテナンス費用が高価なことにある。「AED 設置希望場所」と「設置するAED ボックスに広告を希望する会社」をマッチングさせて設置費用の無料化を図ることで、費用という壁はクリアしたが、広告を掲載することにより、公共施設には「広告をつけたものの設置は認められない」という新たな壁に直面する。役所との粘り強い交渉でその壁を乗り越え、「3分間が勝負」と言われるAED を若者から高齢者まで誰もが操作できるようにと、各地で講習会を開催している。
利用可能性が高い屋外での設置に向けて、技術的な課題を解決する努力をしながら普及を続ける姿勢は、「社会のノーマリゼーションに寄与していこう」という同社の経営理念である。そのユニークなビジネスモデルと社会性は高く評価できるものである。
(注)AED は、Automated External Defibrillator の略。
(注)ノーマリゼーション(normalization)とは、 (障害者などに対して)すべての人がもつ通常(normal) の生活を送る権利を、可能な限り保障することを目標に社会福祉をすすめること。
≪活動内容≫
広告付AED(自動体外式除細動器)ボックス無料設置事業 「街かど救急隊」
◆ 特別賞/美は心とともに賞
株式会社資生堂
≪贈呈理由≫
わが国化粧品業界のトップ企業である同社が、顔面素肌の障害などの悩みを解消する独自のノウハウを開発し、顧客のQuality of Life(生活の質)向上を目指した社会貢献活動を本業と連動させながら全社的に展開しているこのプロジェクトは、資生堂ライフクオリティー(SLQ)メーキャップと同ビューティーセミナーという二つの活動から構成されている。 SLQ メーキャップは、1956 年、広島・長崎の被爆者の火傷跡やケロイドによる心の苦しみを少しでも和らげようという願いから研究開発を進め、光学的な技術も応用して、さまざまな肌の悩みを自然にカバーできる化粧品と美容術を完成させた。 2006 年には東京・銀座の本社ビルにカウンセリング専用のスペースを開設、専門研修を受けたビューティー・コンサルタントが、客の悩みに合わせたアドバイスを行なっている。同時に全国約300 の拠点でも同様のアドバイスをしている。
SLQ セミナーは、高卒社会人のために1949 年に設けた「特別美容講座」を発展させ、高齢者や聴覚、肢体障害者の施設を訪問する「お化粧ボランティア」を推進。2008 年度の訪問先は2,200 件、36,000 人に及ぶ。2008 年度からは社長はじめ役員・全社員が参加、2009 年度からは本社・研究所・工場などに勤務する全社員が参加する「ビューティー・サポーター制度」を確立した。自らの仕事への使命感と誇りを醸成させる本プロジェクトは、企業フィランソロピーを具現化するものとして高く評価できるものである。
≪活動内容≫
資生堂ライフクオリティービューティープログラム
◆ 特別賞/自然共創賞
積水ハウス株式会社
≪贈呈理由≫
日本の国土の約4割を占める里山は、絶滅危惧種を含めた多種多様な生き物を養うだけでなく、野生動物の移動のための回廊という生態系ネットワークの形成によって、生物多様性の保全に重要な役割を担ってきた。しかし近年では、過疎化など社会経済状況の変化によって人による里山への働きかけが減少した結果、里山の持っていた生物多様性が損なわれつつある。同社は、最多の住宅を供給するハウスメーカーとして、住宅を通じた自然環境の保全に向け、 2001年からこの里山をモデルに「5本の樹」計画と名付けた生物多様性を配慮した造園緑化事業を進めている。また、都心の同社本社ビルのビル隣接地に「新・里山」を造成し、自然と向き合う児童教育の場として、また、人々が集まる地域コミュニケーションの場として提供し、その地域に自生していた草花、樹木を植林することによって、本来その地域に生息する生き物の多様性を保護するプロジェクトを推進している。2010年10月には「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が名古屋市で開催されることになり、その重要性が広く認識され始めたが、同社は、それに早くから着目し、社員、顧客、地域住民への啓発につなげる活動を本業の中で実践しており、その着眼と努力は高く評価されるものである。
≪活動内容≫
自然再生と生態系保全を目指す「5本の樹」計画
 
  

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