ふくしま土壌ネットワーク/福島県産桃モニタリング試食アンケート
ふくしま土壌ネットワーク “桃の力”プロジェクト
福島県産桃“あかつき”モニタリング試食アンケート
日時:平成27年(2015年)7月31日(金)第一部 15:00~16:00、第二部 16:30~17:30
会場:キリングループ本社/中野セントラルパークサウス18階 Nagomi
 
 福島県産の桃のおいしさを多くの人に伝え、東日本大震災に伴って発生した原発事故による風評被害を払拭しようと活動を続ける「ふくしま土壌ネットワーク」。
 ことし(2015年)4月には「復興応援キリン絆プロジェクト」の農業支援助成事業を受けて、福島県の代表的な桃の品種である「あかつき」のブランド強化や加工品の開発、価値の伝達、食育といった活動に取り組む「“桃の力”プロジェクト」をスタートさせている。

7月25日、福島市飯坂町「果樹園きつない」にて

左から「なつっこ」「あかつき」「おかやま夢白桃」

おいしさに顔もほころぶ
この日の参加者は105名
 今年(2015年)は春の訪れも早く、初夏には好天が続き、迎えた夏は暑く、桃の生育は良好で、例年よりも1週間ほど早く収穫時期を迎えた。7月25日は、ふくしま土壌ネットワークの会員が所有する果樹園で、福島市内の幼稚園の児童を招待し、「〝あかつき〟の収穫体験・未来の食育イベント」を開催。約20名の親子が桃の塗り絵、「あかつき」のもぎ取り体験などを楽しんだ。
 
 そして7月31日、「“桃の力”プロジェクト」のモニター調査班は、東京都中野区にあるキリングループ本社において、収穫されたばかりの「あかつき」の試食会とモニター調査を実施した。
 この調査は「“桃の力”プロジェクト」の活動の柱の一つであるブランド育成に結びつけるもので、果実の購買行動、試食による桃の品種別評価、「あかつき」を表現するフレーズを探るなどの目的で行われた。
 
 試食会は二部構成で、第一部では20代から30代のキリングループ社員男女52名、第二部では40代から50代の同男女53名が参加した。福島県産「あかつき」と、山梨県産「なつっこ」、岡山県産「おかやま夢白桃」の贈答品クラス3種類を食べ比べ、アンケート調査票に回答を記入していただいた。
 
 果物の好み、他県産の桃との味や風味の違い、購入意志、放射性物質に関する質問、福島県産果実についてのイメージは? ・・・といった設問に、社員たちは真剣な表情で回答を記入していた。
 そしてアンケート終了後には「あかつき」の食べ放題タイムも設けられ、ほっと和んだ空気の中、「おいしいね」とささやき合う声と笑顔の輪が咲いた。
 
 「ふくしま土壌ネットワーク」では、今夏(2015年)、首都圏販売イベントに出店し、また首都圏でのモニター調査を継続し、「あかつき」のブランド力の強化、そして販売戦略や新たな市場の開拓、今後の加工品開発などに繋げていく。
《事前準備》
 アンケート調査の実施主体は「ふくしま土壌ネットワーク」のモニター調査班。この日、会場で桃の準備やアンケート調査を実施したのは、「ふくしま土壌ネットワーク」の副代表で、モニター調査班のリーダーを務め調査設計を担当する、「福島大学うつくしまふくしま未来センター」の小松知未先生と、福島大学の学生たちだ。
 
 午後3時からのアンケート調査を前に、「あかつき」「なつっこ」「おかやま夢白桃」の3種の果皮を剥き、切り分けて小皿に載せ、試食会をした。
 アンケート調査はブラインドテスト方式である。桃を受け取るカンターの前に、果皮を剥かないそのままの「なつっこ」「あかつき」「おかやま夢白桃」を並べ、それぞれに「A・青」「B・赤」「C・黄」の表示のみ添えた。品種名と産地は伏せてある。なお、3品種はいずれも贈答品クラスのものだ。福島県産は「ふくしま土壌ネットワーク」の会員農家から直接購入した。山梨県産・岡山県産は、築地市場に入荷されたモモの箱の中で、「等級のランクが最上級の贈答品」と指定して、卸売業者を介して購入した。
 
 小皿にも、同じ品種ごとに青、赤、黄のタックシールが張られ、回答者はこれら3種類を受け取り、小松先生が作成したアンケート調査票に回答を記入する。

桃は皮を剥いて3分以内に食べるのが基本

小松先生(中央)と福島大学のスタッフ

赤のタグは「あかつき」
アンケート調査票は、11ページの綴りで4部構成となっている。
・第1部:性別や年齢、世帯構成など「回答者の属性」そして「果実の好み、購買行動について」と「モモ・福島県産果実について」
・第2部:「試食するモモの見た目について」と「モモの味と好みについて」
・第3部:「試食したモモの購入意志について」
・第4部:「食品に含まれる放射性物質について」
試食前、試食後、または試食しながら、それぞれの質問に回答するという構成だ。
《モニター調査》

おいしそうな桃を見て自然と笑顔に
 午後3時、モニター調査の第一部がスタート。調査に協力する20代~30代の男性社員20名、女性社員32名が会場に集まった。
 カウンターで3種類の桃を受け取り、アンケート調査票が用意されているテーブルに着席する。着席場所は任意。同じ部署同士や親しいグループごとに席を取る。
 試食前に、まず、小松先生から、調査の主旨について説明があった。
 参加者は、1種類の桃を少し食べ、一口ごとに用意された水を飲んで口中の風味を消し、次の種類に取りかかる。
 
 各テーブル、同席者同士で、味や食感についてささやき合う声が広がった。
 「歯ごたえが違うね。」
 「こっちが甘い。」
 「濃厚な感じ。」
 「品種を意識して買ったことなかったけれど、いろいろだね。」
 「これが好きかな。」
 「何をもって桃らしさと言うべきか。」
 「好みの差って出るね。」
 
 第一部の若い世代は、真剣に食べ比べてしている表情が印象的で、味の感想を語り合う会話も議論のようだった。

じっくり味わってアンケートに記入

「キャッチフレーズは・・・」

感想を語り合う姿も真剣そのもの

「あかつきは福島の代表的な桃です。」
 その後、3種類について答え合わせがあり、「あかつき」の食べ放題となった。
 アンケート用紙には「あかつき」のイメージを記入する欄がある。
 小松先生からは、日本でいちばん数多く生産されている桃が「あかつき」であり、日本を代表する桃であること、その生産量の半分が福島県産であること、実が大きく成長しにくいことから多くの県が栽培を諦めた中で福島県だけが諦めずに栽培技術を確立したことなどについて説明があった。
 
 カウンターの前に置かれた、皮を剥く前の「あかつき」の姿も、もう一度見つめ直したりしながら、見た目、味、食感などを表す形容詞、連想するイメージ、比喩など、思い浮かべたフレーズや単語などを自由に書き込んだ。

ベテランらしくペンの動きもスムーズ
 午後4時30分からは調査の第二部が行われ、40代から50代の男性社員24名と女性社員26名、ほか3名がアンケートに答えた。
 第一部の若い世代とは試食会の雰囲気も変わり、「なるほど」とうなずきながら食べる表情に余裕が感じられた。
 
 「これは食べ慣れた味だね。」
 「自分の中の桃らしいイメージはこっち。」
 「これは甘みがちょっと遅れてくる。」
 「ドラマに例えるとこっちは大河の姫様、こっちは朝ドラのヒロイン。」
 「甘みと酸味が同時に膨らむBが好き。」
 「この味、なんだか懐かしい。」
 「こんな調査なら毎日やりたいね(笑)。」
 
 第一部と同様に、それぞれの品種が明かされると、「ああ」と納得する声と同時に「あかつき」がおいしかったという声が多く聞こえてきた。品評会ではなかったが、各地を代表する品種と比較された中でも「あかつき」の味は好評だった。

主旨をよく読んで・・・

おいしさに納得の表情

さまざまな声が集まった
 「ふくしま土壌ネットワーク」モニター調査班は、今回のアンケートを集計・分析し、福島県を代表する桃「あかつき」のブランド力の向上と強化に繋げる貴重なデータとして活用していく。
 
 「“桃の力”プロジェクト」のサブタイトル、「福島には本当のおいしさがある」――。
 
 高村光太郎『智恵子抄』には、福島には「ほんとの空」がある、という有名なくだりがある。「“桃の力”プロジェクト」でも、くだもの王国ふくしまの代表品種、「あかつき」の本当のおいしさを発信すべく邁進してきた。今夏も大きく甘く育った「あかつき」の「力」を軸に、同プロジェクトが展開する各事業は、いよいよ本格的な挑戦の時を迎える。
《インタビュー点描》
キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 橘 美佳
 「楽しくておいしい試食会でした。母がジャムのお店を経営していて、旬の果物に出合う機会は多いのですが、自分で買うことは実はあまりなく、また、買うときも産地を気にしたことってなかったなぁと気付かされました。
 福島の『あかつき』は、私の中では2番目で(笑)、好みだったのは『あかつき』よりもコリッとした歯ごたえが感じられたAの『なつっこ』でした。バランスのよさは『あかつき』がいちばんかなと思いましたが、個人的にはさっぱりしていて堅めの『なつっこ』が好みです。
 加工品も作られるとのことですが、夏は冷たくて甘いものが食べたくなるので、『あかつき』のバランスのいいおいしさを活かしたゼリーとかを食べてみたいです。ヨーグルトに入っていてもうれしいかな。
キリン株式会社 法務部 深谷 功造
 答え合わせのとき、どれも最上級クラスの桃だと知って、あらためておいしいと感じました(笑)。思っていたより、それぞれ食感が違うんですね。例えばコリコリッとした食感の『なつっこ』はサラダでも面白いかな。『あかつき』と『夢白桃』は果物としてそのまま食べるのがいいね、なんて話し合いながらいただきました。
 『夢白桃』は果汁が多く、甘さもいちばん。『あかつき』はちょっと堅めの歯ごたえのあとに柔らかさと甘みがやってくる。『ん? ちょっと硬い?』という最初の印象を後半でひっくり返してくれましたね。そんな特徴を活かしたマーケティングの方向なども、いろいろ考えるのは面白そうだなと感じました。
キリングループロジスティクス株式会社 物流部 雜賀 隆
 同席した人たちが、一人暮らし、家族がいる、実家暮らし・・・などさまざまで、環境によって桃を食べる機会が多い人と少ない人に分かれるんだなということを発見しました(笑)。私は、桃は大好きなのですが、一人暮らしであること、また、皮を剥く手間がたいへんと感じて、桃を買うことはほとんどありませんでした。カットフルーツならうれしいです。
 なので、加工品でも、皮を剥いた状態で売られていて、丸ごと食べられるものだといいですね。変色しやすいから難しいとは思いますが。『桃の皮むき器』なんていうのもあったらいい(笑)。
 福島県が桃の生産地だということは知っていました。でも、品種までは知らなかった。また、風評被害に対して生産者の方がどんなふうに対応し、PRをされているのかといったことを、きょうは知ることができてよかったです。
キリン株式会社 執行役員 CSV推進部長 林田 昌也
 きょう、あらためて3品種を食べ比べてみて、それぞれ個性がある中で、私としては『あかつき』がいちばん好みでした。決して持ち上げるわけではなくです(笑)。品種改良と栽培に長年ご苦労されたとのこと、そのこだわりがこの味になっているのだなと、一消費者としても感じさせていただきました。
 桃は大好きなのですが、旬が短い。それだけにシズル感のある果物だし、『あかつき』は果汁の多さ、歯ごたえ、甘味と酸味のバランスに優れた、私の中では最も桃らしい桃だなという印象です。特徴があって汎用性がある。知名度を上げていくことができたら、このおいしさに、もっとたくさんの方が出合えるはず。
 風評被害というものが、残念ながら価格や消費量などにも影を落としています。桃だけでなく福島県の農産物は安心安全であること、そしてそれにとどまらず素晴らしいおいしさがあることをしっかりと伝えていくことに、私たちもご協力したい。
 土壌ネットワークの皆さんが、ゼロベースからあらためて『あかつき』の立ち位置を把握されようとしている。我々もブランド化に向けてご支援を継続していきたいと思います。
ふくしま土壌ネットワーク 副代表
うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授 小松 知未 様
 試食を含めたモニター調査は3回予定しています。きょうは第2回目で、1回目は福島大学の学生や職員など若い世代からのデータ抽出を行いました。調査の設計はきょうと同じです。3回目は、果物をよく召し上がる方に世代別で集まっていただいてグループインタビューを行います。
 きょうはキリングループ様のご協力を得て、年代も、果物に対する好き嫌いにも関わらず、首都圏の一般消費者という位置づけで社員の方に集まっていただきました。
 また、専門の業者の方に依頼して、同じ種類の桃を味覚センサーで測定していただき、これら調査のバックデータとします。主観として感じるものが科学的なデータとしてどう表れるのかということを調べます。
 今後は、『あかつき』のキャッチフレーズや贈答用の箱を作るなどしてまいります。「ジューシー」とか「バランスがいい」というのはこれまでずっと使われていたフレーズですが、もっと目を引く説明ができるように、『あかつき』にしか出せない、総合的な販売デザインを創りあげたいです。
 きょうは、3種類の桃が、グレードだけでなく状態もよく揃っていたので大成功です(笑)。集計したデータは年度末に開催予定のシンポジウムで公表し、桃の生産や流通に関わる皆さんをはじめ、産地全体にとって有益な情報として広く知っていただけたらと考えています。『桃の力』を借りての販売戦略構築と、ブランド力アップが目標です。
2015.07.31「ふくしま土壌ネットワーク“桃の力”プロジェクト/福島県産桃“あかつき”モニタリング試食アンケート」おわり

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