JAそうま/トルコギキョウ魅力アッププロジェクト事業方針発表・贈呈式
JAそうま トルコギキョウ生産部会
「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」事業方針発表・贈呈式
日時:平成27年(2015年)9月17日(木)14:30~16:00
会場:JAそうま本店 会議室
 
 「浜通り地方」と呼ばれる福島県の太平洋沿岸地域。海と阿武隈山地に挟まれながらも平野部は広く、山地から流れ出す幾筋もの川が大地を潤す。
 とりわけ浜通りの中北部「相双地方」には、永年耕されてきた農地が広がり、海明かりに負けない鮮やかな緑色の光を大地に満たしている。
 相双地方は一年を通じて好天の日が多く、穏やかな気候に恵まれる。水稲をはじめ、野菜や果実の栽培が盛んだった。中でも南相馬市原町区の春菊やブロッコリー、同市小高区のダイコンは、品質と栽培数量において他地域にも負けない高評価を得ていた。
 また、山間部にある飯舘村は花卉の産地として知られ、分けてもトルコギキョウは、発色のよさと種類のラインナップの豊富さから市場での引き合いも多かった。
 しかし、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故が、相双地方の農業に大きなダメージを与え、南相馬市の南部や飯舘村は計画的避難地域に指定され、地元での農業そのものが一時できなくなってしまった。
 そうした中、JAそうま管内では、風評の少ない花卉を導入し、農業再生を目指す農業者が増えていった。注目されたのは、震災以前から管内でも主要産地となっていた飯舘村のトルコギキョウだった。
 花卉の栽培で相馬地域を新たな産地として確立させるべく、ことし(2015年)4月、JAそうま内に生産部会も設立された。そして「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」がスタート。被災地での取り組みを知らせるとともに、相馬地域で育てられたトルコギキョウのブランド育成を目指すものである。
 
 平成27年(2015年)9月17日、「JAそうま」本店3階の会議室で「そうま農業協同組合トルコギキョウ生産部会による事業方針発表会が開催され、同部会が取り組む「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」に対する「復興応援 キリン絆プロジェクト」 農業支援の贈呈式が行われた。
 トルコギキョウの花言葉は「希望」である。
 生産技術の向上、ブランド育成し、そうま地域のイメージアップを目指して、地域の希望の象徴となるべく、生産者たちのチャレンジがスタートしている。
1.「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」事業方針発表会
 
《主催者挨拶》
そうま農業協同組合 営農生活担当常務 濱田 賢次 様
 震災から4年半が過ぎました。この間、震災前の状態に戻そうとがんばってまいりました。今年度(2015年度)、南相馬では630ヘクタールの田んぼを新たに作付けするに至りました。しかし、米は余っているという現状もあり、お米にばかり頼らず、私たちは園芸に軸足を移していこうと考えております。
 管内のトルコギキョウは、震災前には1億円の売り上げがございましたが、震災に直後、300万円にまで落ち込み、その後は農家、関係者の努力もあって、現在は800万円にまで回復しました。それでも震災前の水準にはほど遠い状況です。しかし、もう一度、相馬地方にきれいな花を咲かせたい。そう願っております。
《来賓代表挨拶》
南相馬市長 櫻井 勝信 様(代読:経済部総括参事兼農政課長 岡庭 信幸 様)
 本市は、復興を着実に前進させるため、平成26年度(2014年度)より「南相馬市復興総合計画」を策定。本市の基幹産業である農業の再興に向け、農地除染および風評の払拭に向けて農産物の放射線量の測定と公表、営農再開の推進と農業基盤の再生などに、関係機関と一丸となり取り組んでいるところです。
 本市農業を取り巻く環境は、米価下落や農業の担い手の高齢化など、たいへん厳しい状況にあります。米に依存する農業経営から、新たな農業への転換に向け、花卉や野菜など園芸作物の振興を図ることを目標としています。  そうま農業協同組合トルコギキョウ生産部会の皆様が、「希望」の花言葉を持つトルコギキョウで新たな産地の確立を目指して新たなプロジェクトに取り組まれますこと、本市の農業再興の加速につながるものと大いに期待を寄せています。
 今回のご支援が、震災からの復興と農業再興へと繋がり、トルコギキョウが起爆剤となって、相双地方が花卉の一大産地となることを願っています。
飯舘村 復興対策課長 愛澤 伸一 様
 未だ全村避難の中にある飯舘村ですが、昨年(2014年)からは村内で生産されたいちごの出荷が始まっています。また、避難解除のあかつきには早期に農業を再開したいと希望する農業者もいらっしゃいます。JAそうま様におかれましては、意欲ある本村農家に対し、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 そして、このたび、トルコギキョウのブランド化に向け、ご支援をいただけますこと、本村といたしましても、たいへん心強く思い、感謝申し上げます。
 相馬地方のトルコギキョウが、再び多くの消費者の皆様に喜びと感動を与える日が一日も早く訪れることを祈念いたします。
《事業方針説明》
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
 私たちの部会はことし(2015年)5月13日に設立しました。会員数19戸、総面積は125アールです。設立と同時にキリン絆プロジェクトの支援を受けられることとなりました。
 稲作が作付け制限となる中、風評被害が比較的少ない花の栽培を始めようとする動きが出てまいりました。
 今回のプロジェクトを「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」と名付け、花を通じて、この地域に新しい風を吹き込みたいと思います。そして、部会員の技術向上、情報発信、産地化を目指して取り組んでまいります。
《事業の背景と現在の課題について》
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 副部会長 二谷(ふたつや) 純市 様
 飯舘村のトルコギキョウは鮮明な花色の豊富な品種が高い評価を受けていましたが、福島第一原子力発電所の事故の影響で、現在はほとんど生産を停止しています。
 そんな中、飯舘村で育苗中だった苗を引き継ぎ、南相馬市原町区および鹿島区の内陸地域で生産が始まりました。風評被害の少ない花卉に対する期待もあり、生産者は少しずつ増えています。
 さらに、カンパニュラなど低温開花性花卉と組み合わせた周年栽培も模索中です。
 震災以降、550アールほどあった管内のトルコギキョウ栽培面積は10分の1近くまで減少、飯舘村では今なお栽培ができません。
 また、生産農家の高齢化や単価の伸び悩みといった課題も多く、さらには燃料費等の高騰などから促成・抑制栽培を控える傾向もあって暖地と寒冷地に出荷時期が重複するなど販売環境は厳しさを増しています。
 今はまだ栽培歴が浅い生産者も多く、品質にバラつきがあるほか、一人当たりの栽培面積が小さいなどの課題もあります。また、産地としての実績不足から、市場の評価が十分に得られていないほか、我々生産者もニーズを十分把握できていません。
 しかし、茎も簡単には折れない、最後まできれいな花を咲かせ続けるトルコギキョウを相馬地方のイメージと重ね、相馬の風土や人の想いを全国の方へ届け、広く知っていただきたいと思っています。
 美しい花を届けることで、皆さんを笑顔にしたい。ふるさと・浜通りの再生を目指し、「希望」の花言葉を持つトルコギキョウで新たな産地の確立を目指します。
 プロジェクトの4つの課題。1. 周年栽培による生産基盤強化、2. 積極的な情報発信とPRによる販売強化、3. 技術の高位平準化による品質の確保、4. 風評の少ない花卉での営農再開に取り組んでまいります。
《事業の概要と目標について》
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 事務局 佐藤 康幸 様
 事業の目的として、大きく3つを掲げています。
 
1. 需要に即した切り花産地の確立
技術の向上と作付面積の拡大による品質と生産量の安定化を図り、切り花生産や、需要に即した花色や品種の構成を目指します。
 
2. 温暖な気候を利用した周年栽培によるブランド化
低温開花性花卉の導入を進め、相馬地方の気候条件を活かした周年栽培態勢を確立し、通年の市場流通と相馬産花卉の知名度向上とブランド化を目指します。情報発信や6次化商品開発、PR活動も行います。
 
3. 広域的な産地規模の拡大の推進
相双地方の生産者との積極的に交流し、情報を共有。産地の広域的な拡大を進め、産地の継続的な発展と、地域農業の復旧と復興を進めます。
 
 事業の流れは、3段階。まず、花卉の現状についての課題整理と市場ニーズの把握。次に、自分たちの生産スタイルやほ場に合った花卉の栽培と品質基準、そして、ブランドコンセプトや販売戦略を作成します。生産マニュアルの作成、情報発信ツールづくり、産直の強化や産地化に向けた取り組みも実施します。
 市場や小売業者、これから出荷の可能性がある量販店などへのヒヤリング、トルコギキョウ生産の先進地である長野県や県内産地への視察も行います。
 東京フラワーポートやJA全農福島、福島県農業総合センターなど協力団体とも連携して、情報提供や栽培へのアドバイスもいただきます。また、飯舘村から避難されている栽培者の方や、相双地方の栽培者の方々とも技術交流などを図っていきたい考えです。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックで相馬地方の花卉の利用を検討してもらうことも目標です。
 相馬地方を花卉生産地として復興させ、市場から選ばれる花を生産してまいります。
2.「復興応援 キリン絆プロジェクト 農業支援」贈呈式
 
《主催者挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 当社では、東日大震災以後、被災地での営農再開に向けて応援を続けてまいりました。私が福島支社に着任いたしましたのは2011年の9月でしたが、真っ先に訪問したのがJAそうま様でした。
 思えばもう4年が過ぎております。皆様の生活環境も大きく変化しております。私どもの支援の 第1ステージ では農業機械の支援をさせていただき、第2ステージ からは営農再開後の商品を使いまして6次化商品の開発の応援に力を置いてまいりました。
 全国的には、福島の復興はまだまだ進んでいないのではないかと言う方もおられますが、私は4年、福島に住んでおりまして、着実に前へ進んでいると実感しております。きょうまた、キレイなトルコギキョウの花を見せていただき、その実感を改めて深めた次第です。
 皆様のプロジェクトが、広く全国に知られていく機会が生まれますよう願っております。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 高橋 陽子
 キリンビール様では飲料メーカーとして、「生産から食卓まで」と、食につながるところで被災地をご支援されてまいりましたが、今回は花卉、トルコギキョウの生産をご支援されます。福島県浜通り地方の皆様は、風評被害といった他の地域にないご苦労をなさっておられる中、頑張っておられ、そのことに本当に敬意を表したいと思っております。トルコギキョウで地域をもり上げて行こうという皆様の思いと志で、今後もこの相双地域から元気を発信していっていただきたいと思っております。
 母の日といえばカーネーションですが、これからは「敬老の日といえばトルコギキョウ」となればよいですね。とてもふさわしい花ではありませんか! 若者からお年寄りへ、お年寄りから若者へ、花言葉でもある「希望」を、世代を超えて伝え合っていけたら素敵だなと思います。
 
《目録贈呈》
受け手:そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
 
贈り手:キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
    公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
《受贈者代表挨拶》
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
 この度は、このような大きなご支援をいただき、ありがとうございます。今回のプロジェクトが、南相馬地域の新しい産業の一歩となれますよう、部会員一同、がんばってまいります。よろしくお願いいたします。
《激励のご挨拶》
福島県 相双農林事務所 所長 小島 重紀 様
 キリンビール様には2011年より多大なご支援を頂戴しております。あらためて御礼を申し上げます。また、飯舘村のトルコギキョウの苗を引き継ぎ、南相馬の皆様が大きく育てようとしていること、ぜひ、成功させていただきたいと願っております。
 相双農林事務所といたしましても、この地方の農業の振興へ結びつくよう、現在、全国6大都市の市場調査を進めております。今回の「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」とも結びつけながら販路の拡大等に協力していきたいと思います。
 福島県では、会津の昭和村のカスミソウに全国からの注文が殺到しています。ブランド力もさることながら、需要に見合った生産量が確保できていることも大きい。付加価値を付けた販売戦略は大切です。変な言い方になりますが、震災以来福島、南相馬の知名度は上がっております。マイナスをプラスに転じられるよう、ともにがんばってまいりたく思っています。
JA全農福島 福島営農事務所 所長 加藤 広幸 様
 全農福島といたしましても、産地復興とブランドの確立を目指すJAそうま様の「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」を、販売面において全面的に支援してまいります。
 生産部会の皆様は、健康に留意され、高品質な花卉生産に取り組まれますよう、お願い申し上げます。
《インタビュー点描》
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
 「トルコギキョウの栽培歴は15年ぐらいになります。初めは稲作からの転作で麦を作り、さらに花卉も始めました。花は最初からトルコギキョウです。
 私の場合はこれまで、秋に種を蒔き、冬越しして春夏に咲かせるという作型です。でも、これからは周年栽培を目指しますので、そこは新しい挑戦になります。昨年(2014年)からはカンパニュラも育てています。
 南相馬の花は今はまだ市場からの引き合いも弱いのですが、これからは「相馬産のお花がほしい」と言ってもらえるよう、部会員みんなで栽培の腕も上げて、ブランド化を目指していきたいと思います。
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 副部会長 二谷 純市 様
 以前は水稲が中心でした。そちらもことし(2015年)は試験的に再開しましたが、育苗ハウスが10アールほど空いてしまっている状況です。そこで農協さんとも相談し、トルコギキョウの栽培を始めました。ことしで2年目になります。
 作ってみて難しいなと感じるところは、温度管理です。気温や日照など、ちょっとしたことで発色が違ってきます。また、ことしは猛暑で、お盆やお彼岸などの値段が高くなる時期よりも早く咲いてしまいました。2週間ぐらい早かったかな。
 これからは、トルコギキョウを南相馬を代表するブランドに育て、「南相馬といえばこれしかない」と言われるものにしていきたいです。個人的には、ホワイト、ブルー、ピンクの3色は質・量とも揃えて、この色ならば他の地域に負けないという花を育てて行きたいと思っています。
そうま農業協同組合 トルコギキョウ生産部会 事務局 佐藤 康幸 様
 本日いただいたキリンビール様のご支援を、これまで部会でできなかった活動に使わせていただきます。そして、産地化を目指す生産者の皆さんのサポートをしていくこと。それが事務局の役目だと感じています。
 6次化商品の開発なども目標としています。具体的なプランはまだですが、事前調査を行い、まず「ブランドとは何か」ということから勉強し、アドバイザーも選定し、生産者の皆さんで検討していきたいと考えます。
 トルコギキョウは、すでに全国で栽培されていますが、南相馬のトルコギキョウとして知名度を上げていくこと。そのためには、カンパニュラなど低温開花性の花も加え、周年栽培を目指し、南相馬の花が、一年中、市場に出回るように努めてまいりたく思っています。
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 椎屋 直孝
 本日、生産部会の皆様の事業方針を伺いまして、県内のみならず全国の皆様にトルコギキョウを知っていただきたいという思いを強くし、花の魅力を伝えていく機会をもっと作っていけたらと思いました。そして、そこから南相馬、相双地区に興味を持っていただき、どんなところだろう、行ってみたいなと思っていただけるキッカケになれば嬉しいです。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 トルコギキョウ生産部会は、女性が多いですよね。ぜひ、女性の力で元気を引っ張っていってほしいなと思いました。そして、若者がふるさとに根付いていく一つのモデルケースになっていけたら嬉しく思います。
 また、外からの力で、地元の方の心を興したり、力を引き出したりすることができるネットワークづくりも進められたらいいですね。
 母なる女性の大きな思いが、きれいな花を育てて、ピンチをチャンスに変えていく。やさしい花色を咲かせるトルコギキョウは、そのチャレンジにとてもふさわしい花だと感じました。
2015.09.17「JAそうま/咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト事業方針発表・贈呈式」おわり

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