果樹農業6次産業化プロジェクト産学官連携人材育成事業成果報告会
復興応援 キリン絆プロジェクト
果樹農業6次産業化プロジェクト産学官連携人材育成事業
成果報告会
日時:平成31年(2019年)3月27日(水)14:00~15:30
会場:ふくしま逢瀬ワイナリー(福島県郡山市逢瀬町)
 
 平成31年3月27日、福島県郡山市の市街地を見下ろす西郊の高台。美しい雑木林に囲まれた「ふくしま逢瀬ワイナリー」で、「復興応援キリン絆プロジェクト 果樹農業6次化プロジェクト 産学官連携人材育成事業」の成果報告会が行われた。
 
 報告されたのは、3年前の平成28年8月にキリン絆プロジェクトの助成を受けて郡山市と郡山地域果実醸造研究会がスタートさせた「新たなワイン産地の人づくり(産学官連携人材育成事業)」の経過と成果である。
 この支援は、東日本大震災の原発事故以来、風評被害が続く福島県の農業復興に繋げる事業であり、ふくしま逢瀬ワイナリーがワイン醸造に使用するワイン専用ブドウの生産を担う人材の育成に活用されてきた。
 事業主体者である郡山市と郡山地域果実醸造研究会は、3年間に渡って栽培技術や醸造技術に関する研修のほか、マーケティング、ブランディング、視察研究などを継続。さらに、ブドウが収穫できるまでの間はワイナリーとともに果樹の成長を見守り続けてきた。
 こうして昨秋平成30年秋には、ついに郡山産のワイン用ブドウが初めて収穫され、醸造に着手。今春、平成31年3月10日、郡山生まれの赤、白、ロゼの3種類のワインが発売された。
 ワインは「Vin de Ollage ヴァン デ オラージュ」と名付けられた。その由来は、福島県の言葉で「自分の家」を意味する「おらげ」という言葉にちなんだもの。地元の人々が「おらげのワイン」として自信をもって奨められるようにと、福島の未来を思う生産者の情熱と誇りが込められたネーミングである。
 
 事業報告会では、今春、国立大学法人福島大学に開設されることになった農学群食農学類との新たな連携も発表され、醸造技術と専門知識を学んだ人材が輩出されていく期待が高まった。ワイン造りにおける「産学官」のスクラムは、一層強固なものとなった。
 ワインのラベルには、安積野(あさかの)と呼ばれていた郡山地域を開拓するため、明治時代初頭に切り拓かれた「安積疎水」がデザインとしてあしらわれている。今も郡山の大地を潤す一本の水路は、日本遺産にも認定されている市のシンボルだ。
 そして開拓者精神を表すように6本の鍬が円を描いて花のようにデザインされ、周囲に散らされた野花とともに、人と大地と水が生み出す豊かな恵みを象徴している。
《主催者挨拶》
郡山市長 品川 萬里 様(代読 副市長 菅野 利和 様)
 
(本日は、公務が重なり出席できない品川萬里市長より挨拶を預かってまいりました。代読させていただきます。)
 
 本日ご出席の皆様には日頃から本市農業の振興と発展にご協力とご理解をいただき、また多年に渡り、多大なるご支援を頂戴しておりますキリン株式会社様並びに公益社団法人日本フィランソロピー協会様に心より感謝を申し上げます。
 本プロジェクトは、東日本大震災の発生に伴う福島第一原子力発電所の事故の影響により、本市をはじめとする福島県産農産物に対する風評被害が依然として残る中、その払拭と6次産業化による農業の再生と振興を図るため、地元産果実の生産、そしてワインやリキュールなどの製造販売に取り組む人材の育成を目的として実施されてきたものです。
 郡山地域果実醸造研究会の皆様は、3年前より、本市では初めてとなるワイン用ブドウの栽培に戸惑いながらも取り組んでこられました。平成28年度から29年度まではブドウの栽培研修をはじめ、醸造や販売研修など、計20回の研修会を開催し、産学官連携による人材育成に取り組んでまいりました。
 その熱意とご努力により、ことし3月10日、ついに本市で生産されたブドウ100%から造られたワインの完成に結びついたところです。
 また、福島大学にことし4月より新たに開設される農学群食農学類において、農学実践型教育プログラムの一つに選定していただきました。大きな喜びであると同時に、さらなる産地形成に向けて期待を寄せているところです。
 本市といたしましても、本プロジェクトにおいて得られた知見をもとに、関係機関と連携して技術指導等を続けてまいります。郡山ワインが、国内はもとより世界中の方々の愛されるブランドとなるよう、ますますの技術向上に励んでいただけますようお願いいたします。
《主催者挨拶》
郡山地域果実醸造研究会 会長 橋本 壽一 様
 
 郡山市内ではこれまでほとんど栽培されていなかったワイン専用ブドウ品種を、本日ここにご出席の生産者の皆様は、ノウハウも指導者もいない中で栽培を開始しました。そんな中、キリン絆プロジェクトの支援をいただき、ワインづくりに関するコンサルタントとして実績のある「マザーバインズ」様のご指導をいただくことができました。
 平成27年春に定植したブドウが、昨秋初めて収穫され、逢瀬ワイナリーで醸造されたワインがことし3月10日、販売されたところです。丁寧に栽培したブドウが初めてワインとして販売されたことを本当に嬉しく思います。
 そして当地域で造られるワインが、さらに良いものとなって行くよう努力してまいりますことを、生産者を代表しましてお誓い申し上げますとともに、今後も関係者様の変わらぬご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。
《来賓挨拶》
福島県 県中農林事務所 所長 桃井 栄一 様
 
 東日本大震災と原発事故から8年が過ぎ、インフラ整備など復興が目に見えて進んできている一方で、避難を継続されている方も多くいらっしゃいます。復興には、まだまだ様々に挑戦していかなければなりません。
 そんな中、3月10日、郡山産のワイン専用ブドウで醸造した郡山産のワイン「ヴァン デ オラージュ」が発売されました。農作物の生育管理が厳しい昨夏の猛暑の中、こうして生まれたワインは、生産者や関係者の皆様のご努力の賜物であり、心より敬意を表します。
 本日は、郡山市の農業の復興と地域の持続的な活性化につなげるため、産学官が連携し、特産品づくりを担う新しい人材を育成する取り組みについての事業報告です。ブドウ栽培の技術や醸造技術研修、マーケティングなどの活動成果が、今後の郡山産ワインの生産振興はもとより、郡山市農業の振興に幅広く寄与されますことを期待します。
 県としまして、県産農産物の安心安全確保のため、農業生産工程管理、いわゆるGAPの取り組みをさらに推し進め、県産農産物の魅力の発信により販売力の強化に努め、郡山地域の農業振興を進めてまいる所存です。
《来賓挨拶》
郡山市議会 議長 佐藤 政喜 様
 
 平成27年10月、ふくしま逢瀬ワイナリーが誕生し、翌年3月にはワイナリー産ワインが出荷されるなど、果樹農業6次産業化プロジェクトは着実に成果を上げてまいりました。
 本プロジェクトは、ワイン専用ブドウの生産、ワインの生産と加工、販売を一連のものとして継続的に実施していくための人材育成を目指して実施しているものです。そしてことし3月10日には本市で生産されたブドウで醸造した郡山産ワインが販売されるなど、熱意ある関係者のご努力により、着実にその成果を上げているところです。
 この成果を、これからも発展・継続していただき、郡山産ワインやリキュールなどが全国の方々に広く親しまれ、ひいては本市のさらなるイメージアップと地域経済の活性化に繋がることを念願するものです。
《来賓挨拶》
福島大学 経済経営学類 准教授 則藤 孝志 様
 
 郡山市をワインの銘醸地にして、全国、世界から人々の集う食の都にしようという夢の実現に向けて、本プロジェクトの関係者の皆様は着実に前へ進まれているものと思います。そこで欠かせないものがワイン造りを担う人材です。特にワインの品質に決定的な影響を与えると言っても過言ではない醸造用ブドウを、地域の中でどう生産していくか。その担い手を育てることが第一の、そして最大の課題です。
 これまでは郡山地域果実醸造研究会とワイナリーが一体となって生産者組織を作り、それを行政がサポートし、マザーバインズさんが技術指導するという産官の連携があり、そこへキリングループ様の金銭面でのご支援がありました。
 一方で、産官学の「学」を担うべき地元の国立大学法人である福島大学は、何ができるのか、何をすべきかが問われています。福島大学では、ワイナリーが構想段階にあったころから三菱商事様や復興支援団体の方々と交流し、2年前からは「寄付講義」をご提供いただき、本学において「ワインを通じた地域づくり」という市民公開講座を開いております。
 ワインや醸造などの科学的研究とそれを学んだ人材を輩出していくこと。これがワイン産地づくりにおいて、大学に求められていくことと考えます。そしていよいよ今春、本学に食農学類が開設されます。ぜひ皆様とも連携し、また学生たちの学びの場、研究の場として使わせていただき、ワイナリーと郡山市に貢献できますよう願っています。
 ワインの銘醸地は数年でできるものではありません。ワイン造りは農業そのものですし、地域づくりでもあります。継続発展が決定的に大切です。私たちも皆様とともに一歩ずつ前へ進んでいけたら幸いです。
《成果報告》
郡山市 農林部 園芸畜産振興課 主任技査兼係長 大和田 裕一 様
 
 本事業は、郡山地域果実醸造研究会と郡山市との協働で進めてまいりました。はじめに、事業開始前の郡山市の状況を説明させていただきます。
 本市の農地は87%が水田で、稲作が中心です。樹園地は98ヘクタールと農地全体の1.1%でしかなく、ワイン用ブドウの栽培に関するノウハウは全くありませんでした。
 そこで、事業主体である研究会と市、そこにキリン絆プロジェクトの支援をはじめとする様々なご協力のもと取組み体制を構築いたしました。
 栽培指導支援としてマザーバインズ様から講師の派遣をいただき、また支援協力として県中農林事務所様、福島大学様、日本調理技術専門学校様などのお力をお借りし、そして最終的にワインを作っていただく三菱商事復興支援財団様とふくしま逢瀬ワイナリー様とともに協働の体制を整えました。
 人材育成事業の内容は、(1)ワイン用ブドウの栽培技術研修、(2)ワイン等醸造技術研修、(3)マーケティング研修、(4)ブランディング研修、(5)視察研修、(6)教育機関との連携の6点です。
 栽培技術研修では、平成28年度夏から、継続中の30年度までで20回行いました。当初9農家、現在は13農家がお互いにそれぞれの圃場を巡回して、管理状況や病気の発生状況などを観察し合って、必要なアドバイスを受けています。
 28年度の研修会は5回実施しました。市外の実績ある圃場へということで宮城県の秋保醸造所様を見学し、そこで初めてワイン用のブドウを見たという方もおられました。また、逢瀬ワイナリーがワイン用ブドウを購入している会津地方の小森ぶどう園様も訪ねました。
 29年度には、5月から全8回の栽培指導会を開催し、芽掻き、誘引、整枝、樹形、摘葉、防除など時期に合わせた指導を行いました。実がついてくる7月には除草を行い、害虫発生のリスクを排除するなどを研修。また座学も開催し、野外での体験と机上での知識の両方を学び、秋の研修では、来春に向けての剪定技術なども教わりました。年度最終となる早春の研修では最終的な剪定の指導も受けました。
 30年度もまた、ここまで計7回、前年と同様の研修会を実施しております。
 ワイン等醸造技術研修では、平成28年9月30日の小森ぶどう園での研修のあと、そこで収穫されたマスカット・ベーリーAという品種について醸造までの過程を学び、搾る前と後の果汁の味を知るなど、原料となるぶどうの品質の大切さを知ることができました。また29年12月には、税務署から講師を招いて酒類販売の許可取得の方法などを教わりました。
 マーケティング研修は29年3月、日本調理技術専門学校で実施。生産者と飲食業界の方が同じテーブルを囲んで、テイスティングや料理とのマッチングなど、どんなワインが求められているかといったことを勉強しました。
 ブランディング研修は28年11月、ログロード代官山で開催された「郡山マルシェ in 代官山」に、郡山ブランド野菜協議会様と一緒に出店し、消費者の声を直接聞きながら、ブランド構築の方途を検討。また、29年9月には逢瀬ワイナリーでのイベントで、郡山市の特産品と併せた販売戦略などを検討いたしました。
 視察研修では、平成28年には北海道の余市と奥尻ワイナリーを訪ね、ベテランの栽培農家さんを見学、積極的な質問がいくつも飛び出しました。29年には長野県のヴィラデストワイナリー、アルカンヴィーニュ、安曇野ワイナリー、アルプスワイナリー自社圃場など様々なワイナリーを訪れ、管理方法などを学びながら自分たちの作り方などを振り返り、参考にさせていただきました。
 教育機関との連携といたしましては、福島大学の農学実践型プログラムにおいてワイン造りを核とした農業実習を連携して行う予定となりました。
 キリン絆プロジェクトのご支援をいただき、様々な研修や取組みを行うことができました。初めてのワイン造りは難しいことだらけでしたが、これからも研修と研鑽を重ね、良いワインを造っていく所存であります。
《商品説明》
一般社団法人ふくしま逢瀬ワイナリー 醸造責任者 佐々木 宏 様
 
 当ふくしま逢瀬ワイナリーは2015年10月に完成し、同じ年、郡山市内の4軒の農家の方に醸造用のブドウを植えていただきました。現在は13軒、約8ヘクタールで栽培していただいております。昨年2018年に初めて郡山産ワイン用のブドウを収穫し、初めて醸造させていただきました。その商品が「ヴァン デ オラージュ」です.
 コンセプトづくりとラベルデザインをマザーバインズさんにも一緒に考えていただきました。
 ラベルには安積疎水の一本の流れ。そして大地と水と野花を赤、白、ロゼでイメージしています。
 赤ワインは、郡山産のメルロー、ブラッククイーン、カベルネソーヴィニヨンをブレンドしました。すっきりした酸味としっかりした渋みのしっかりした赤ワインに仕上がっています。
 白ワインは、ソーヴィニヨンブランとシャルドネのブレンドタイプ。柑橘系のグレープフルーツのような香りが特徴で、すっきりした味わいになっています。おかげさまを持ちまして、どちらも販売開始から間もなく完売いたしました(笑)。
 ロゼは、メルローとカベルネソーヴィニヨンのブレンドです。ブドウの味わいがしっかり残り、すっきりした味わいは、これからのお花見シーズンにぴったりのワインです。
 ワイン造りは、1年2年という短い期間で進めていく事業ではありません。長い年月をかけて樹をつくり、いいワイン造りをしていかなければなりません。ワインの良し悪しの8割から9割はブドウの出来で決まるともいわれています。昨年の天候は、夏の厳しい暑さがあり、そのあとの秋雨が続くなどして、栽培農家の皆様には非常なご苦労をおかけしました。
 ことし以降、そして5年後、10年後を考え、ふくしま逢瀬ワイナリーは、これからも良いワイン造りを目指してまいります。
 昨年は、6軒の農家さんに約7トンを収穫していただきました。ことしはまたさらに軒数が増えて、収量も増えていく予定です。研究会の皆様にはまたご苦労をお掛けいたしますが、引き続き、いいブドウづくりを一緒にしていきたいと考えます。
《激励挨拶》
キリンビール株式会社 東北統括本部 南東北支店長 橋本 岩男
 
 本日は素晴らしい成果をご報告いただき、ありがとうございました。
 3年前の8月、市役所様での贈呈式の際、研究会の橋本会長と「2020年ごろにワインができあがるといいね」といった会話があったことを思い出していました。それよりも1年早く、こうしてワインが発売されたことをとても嬉しく思っています。
 商品のラベルも味も、とてもさわやかです。そしてネーミングの「ヴァン デ オラージュ」ってすごくかっこいい名前なのですが、「オラージュ」がこちらの言葉で「おらげ」だということは私も郡山市出身ですのでよく分かります。「オラの家のワイン」っていう、すごく親しみの持てるネーミングだと思いました。郡山、そして福島から発信し、全国に広がって行ったらいいなと感じています。若くてフレッシュなワインも良いのですが、熟成してコクとボディ感があるワインも期待したいと思っています。そういう意味では1年2年ではできないとは思いますが、時間というコストをかけて、じっくりと良いワインができていったら嬉しいと思います。
 日本のワインは、今、すごく注目を集めているカテゴリーです。競合環境も厳しいのかもしれませんが、その中で、この郡山産ワインが負けないように、そして郡山・福島のお酒の文化、食の文化の発展に、これまで通り、そして楽しく一緒に取り組んでいけたらと思っています。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 
 橋本会長に初めてお会いしたのは、ちょうど3年前の贈呈式の時だったかと思います。圃場へ伺いまして、ブドウ作りについて熱く語っていただきました。
 いろいろなところで新しい試みを始めようとするとき、若い方ががんばっていらっしゃいます。先輩方のやり方の殻を破って新しくやろう!という場合が多いのですが、すでにベテランでいらした橋本会長が「郡山で新たにワイン造りをするのだ」という熱いお気持ちが伝わってきたことを、とてもよく覚えています。本日の報告会に伺えたことは、仲間に加えていただいた者として感無量でございます。
 福島県は東日本大震災でも特に原発問題という解決が難しい問題があり、郡山市も放射線量が高いとの風評被害が大きいところです。
 様々な支援で何度も訪問させていただきました。農家の皆さんは、もがき苦しみ、怒りなどもある中から、しかし、未来へ向かって頑張ろうとする強い意志と願いは、いつも肌に感じていました。ここまでご一緒させていただきましたこと、本当にありがたく思っております。
 郡山産ワインは、まず市民の方々にファンになってほしいと思います。「おらげのワイン」つまり自分たちのワインというのは、郡山の皆さんの、そして福島の人たちの誇りです。逆境の中でもみんなで力を合わせれば未来がある、未来を創る力があるということを若者たちにも実感してもらえるような、そんなワインの力があるのではないかと感じています。
 これまでのご努力に敬意と感謝を表しまして、一ファンとして飲み続けたいですし、皆様も造り続けられて、元気な日本がつくられていくことを願っております。
 
《記念撮影》
復興応援 キリン絆プロジェクト
果樹農業6次化プロジェクト 産学官連携人材育成事業成果報告会
 
平成31年3月27日(水) 於:ふくしま逢瀬ワイナリー
 
 
《インタビュー点描》
郡山地域果実醸造研究会 会長 橋本 壽一 様
 
 私が育てた品種はメルローで、今はこれ一本です。来年あたりからは白のソーヴィニヨンブランも収穫できるようになると思います。個人的には生食ブドウを40年栽培してきましたので、基本的な生態などは知っているつもりです。戸惑ったのは、今回育てたのがヨーロッパの品種だったということ。つまり乾燥地帯のブドウだったということ。雨の多い郡山では病気が発生しやすいのです。将来的には地域に自生している山ブドウを改良して、地域に合った品種ができないかと思ったりしています。もちろん10年、20年かかることと思いますが、つくりやすい品種や環境を整えれば栽培面積も増えていくかと考えています。名実ともに郡山のブドウから造ったワイン。それが将来的な夢です。
 欲を言うなら、人材づくりという面では、これからも引き続きご支援いただけたらさらに充実したものになっていくかなと(笑)。つくってみて分かってきたこともたくさんあるんです。もっと中身の濃い勉強や研修ができるかなと思います。
 でも、ベースになるものは積み重ねました。そして日本人にはきめ細やかさがある。日本のワイン造りはまだ長い歴史はありませんが、世界のコンクールで注目を集めています。気候的には不利でも、そのきめ細やかさという点では私たちは自信があります。さらに5年、10年先を楽しみにしていてください。
《インタビュー点描》
一般社団法人ふくしま逢瀬ワイナリー 醸造責任者 佐々木 宏 様
 
 昨秋の収穫は、私も含めて皆さんが待ちに待ったブドウでした。まだ若く収穫ができない期間でも、樹はずっと世話を続けなければいけない。それを一緒に見てきました。ブドウが実を付けた昨年は暑い夏を過ごし、収穫の時期には長雨。そうした皆さんのご苦労の上に収穫できたブドウなので、感謝の言葉しかありません。
 私は醸造の責任者ですが、皆さんの圃場を訪ね、研修も一緒に受けてまいりました。実際の醸造の場面で自分のすることはとてもシンプルです。ワインの出来の8割か9割はブドウ次第なので、私はそのブドウの味をワインとして表現しているだけです。いちばんご苦労いただいているのは農家の皆さんです。
 苗を植えるところからご一緒して、管理を続けてきた3年間でした。それだけに今春の発売は本当にうれしいです。
 きょう、飲んでいただいた味が、18年収穫の郡山産ブドウの味そのままです。農作物ですので味わいは毎年変わってしまうかもしれませんが、またことしも飲みたいねと思っていただける味にするのが私たちの仕事です。でも、これが郡山の大地の味、素直な味です。収穫量が増えたなら、また様々なアイテムを造っていきたいと思っています。
《インタビュー点描》
キリンビール株式会社 東北統括本部 南東北支店長 橋本 岩男
 
 私のふるさとのワインです。嬉しいです。フレッシュで若くて、思っていた通りの味に出来上がったと思います。
 個人的には、白ワインがとてもフレッシュで、ソーヴィニヨンブランのいい酸味が出ているなと思い、気に入りました。赤も、カベルネソーヴィニヨンの割合が高くないというお話でしたので、味わいもまた変わっていくのかなと思います。
 先ほどの成果報告でもお話がありましたが、逢瀬ワイナリーを起点とした郡山の食文化やワイン文化を発信するイベントなども多く開催されていますので、当社もずっと関わらせていただきたいと思います。
 地元の方々に、地元のワインとして楽しんでいただいて、ゲストをおもてなしするお酒として、あるいは郡山のおみやげ、贈答品として広がっていくといいなと思います。私も、ファンとしては楽しみ、企業人としては盛り上げに貢献していきたいと考えます。
2019.03.27「果樹農業6次産業化プロジェクト産学官連携人材育成事業成果報告会」おわり

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