Latest Update:2020.7.7

◆ 農福連携とは
農福連携(のうふくれんけい)とは、農家および農業団体と、社会福祉法人や特定非営利活動法人などの福祉団体が連携して、障がい者や高齢者らの農業分野での就労を支援する取り組みを指します。
近年、農業分野では 、農業従事者の高齢化や担い手不足が問題となっています。 一方、福祉分野では、障がい者などの就労機会の拡大と作業工賃の引き上げが課題です。そこで、両分野が連携することにより、農業分野においては労働力確保と生産力維持、福祉分野においては障がい者等の活躍の場の拡大と自立支援を図ることが、農福連携の基本目的です。
◆ 郡山市から受託の背景
当協会は、1999年度以降、知的障がい者の経済的自立を支援すべく、授産事業の振興サポート、企業による自立支援の実態調査や事例紹介、就労移行支援のサポートなど、さまざまな取り組みを行ってきました。また、東日本大震災後の東北被災地における 障がい者スポーツ支援 にも、積極的に取り組んできました。
一方、東北復興支援においては、「復興応援キリン絆プロジェクト」の農業支援を担当し、岩手・宮城・福島の3県において、営農再開のための農器具寄贈、農産物のブランド化支援、6次産業化支援、担い手育成支援等のサポートを実施しました。福島県郡山市関連の取り組みも多く、「ふくしま逢瀬(おうせ)ワイナリー」における 地域発のワイン醸造の原料ブドウの育成、地場の伝統野菜のブランド化 といったプロジェクトを支援しました。
さらに当協会は、早くから農福連携の動きにも注目しており、2018年2月23日には『農福連携の最先端を学ぶ』をテーマに、第340回定例セミナー(当協会主催で、企業の社会貢献担当者を主な対象とする月例学習会)を開催しています。講師には、わが国の農福連携推進の第一人者である全国農福連携推進協議会(その後法人化して現在は 一般社団法人日本農福連携協会)会長・濱田健司氏をお招きしました。
こうした実績を背景に、2019年に郡山市から委託を受け、2021年までの3年間にわたって農福連携のビジネスモデル構築に取り組んでいます。
◆ この事業が目指すビジネスモデル
農福連携は、農業の担い手不足への対応策として生まれた概念ですので、一般的には農家支援にその主眼が置かれ、その担い手として考えられたのが障がい者支援です。
当協会が構築を目指すモデルは、障がい者や高齢者のみならず、ニートや引きこもりなど、さまざまな理由で働きにくさを抱えるすべての「就労弱者」に対して、農業を通じて就労機会を提供します。そして、3年間でビジネスモデル構築が完了したあとは、地域住民や消費者の参画による農福連携事業が構築され、農業の再生や地域創生に寄与することを目指します。
そのため、本プロジェクトは、スタート当初から、地元・郡山市でニートや引きこもりの就労支援を担う 特定非営利活動法人キャリア・デザイナーズ(理事長・深谷曻 氏/元・福島ヤクルト販売株式会社 代表取締役社長)と緊密に連携し、2021年の本プロジェクト終了後には、同法人が主体となって、構築されたビジネスモデルが地域(郡山市)で長く継続されるよう、その体制づくりに努めます。
当協会が構築を目指すモデルは、障がい者や高齢者のみならず、ニートや引きこもりなど、さまざまな理由で働きにくさを抱えるすべての「就労弱者」に対して、農業を通じて就労機会を提供します。そして、3年間でビジネスモデル構築が完了したあとは、地域住民や消費者の参画による農福連携事業が構築され、農業の再生や地域創生に寄与することを目指します。




◆ 初年度
・期間:
2019年8月~2020年3月
・目標:
農福連携の実現に向けた課題抽出と機運の醸成
・活動:
1. 協力団体の抽出と調整
2. 就農体験の実施と結果検証
3. ジョブコーチの育成
4. 農福連携推進のためのフォーラム開催
2. 就農体験の実施と結果検証
3. ジョブコーチの育成
4. 農福連携推進のためのフォーラム開催
1. 協力団体の抽出と調整
この事業の第1ステップとして、次の農家8軒および福祉関係9団体にご協力いただけることとなりました。
・提携農家:
農家
主な作物
1. いけがみ農園
きゅうり、トマト ほか
大葉、ワイン用ぶどう ほか
3. 有限会社 橋本農園
食用ぶどう、ワイン用ぶどう ほか
4. 有限会社 鈴木農園
なめこ、しいたけ、ワイン用ぶどう ほか
かいわれ大根、サンチュ ほか
ねぎ、ワイン用ぶどう ほか
7. 鈴木農場
とうもろこし、ヤングコーン、枝豆 ほか
8. 希望ファーム
レタス、ねぎ、きゅうり ほか
・提携団体:
授産施設・就労弱者支援団体
分類
就労継続支援B型
4. 株式会社かるみあ
就労継続支援A型、就労移行支援
就労継続支援A型・B型、就労移行支援
8. 郡山地区 BBS
保護観察下などにある青年支援
引きこもり、ニートの自立および就労支援
2. 就農体験の実施と結果検証
初年度は、3軒の農家にて4団体から合計22名の発達障がいのある人たちが農作業を体験しました。

農場:希望ファーム
作業:レタス収穫と箱詰め
マルチシート剥がし

農場:鈴木農園
作業:椎茸菌床作業、にんじん手掘り

農場:降矢農園
作業:サンチュ収穫
<就農体験結果>
・発達障がい者は、一人で複数の異なる作業は任せられないが、作業工程を細分化して一つの決まった作業を割り当てれば、十分に就労可能である。
・早朝からの労働や、比較的長い時間連続した労働に拒否反応を示す障がい者が多い。
・障がい者の施設外就労は、福祉団体自身が農業に参入したり、農家が障がい者を直接雇用するよりも、容易に着手できる。
・農家の作業量は、農作物の作柄などにより不安定になることが多いが、提携農家の作業需要は十分に確保されており、第2年度以降には働き手不足が予想される状況で、参加する福祉団体を増やすことが優先課題である。
・参加団体を増やすに当たっては、高齢者や学生など、発達障がい者以外の参加を拡大する必要がある。
3. ジョブコーチの育成
この事業が、委託期間終了後もビジネスモデルとして継続して行けるかどうかは、農場での作業を指導するジョブコーチ育成の成否にかかっています。当協会では、農業分野と福祉分野の双方に精通したスタッフが、将来、農福連携コーディネータおよびジョブコーチの機能を担う特定非営利活動法人キャリア・デザイナーズの担当者の育成に努めました。
育成過程では、ジョブコーチが、障がい者の多様性を理解することに重点を置き、さまざまな農作業を指導するに当たって、毎回次のようなステップを踏んでいます。
育成過程では、ジョブコーチが、障がい者の多様性を理解することに重点を置き、さまざまな農作業を指導するに当たって、毎回次のようなステップを踏んでいます。
Step 1:就労弱者にどのような農作業が可能なのか、農家とともに仮説を立てる。
Step 2:福祉団体スタッフにその作業を見学してもらう。
Step 3:作業実施の可否を判断する。
Step 4:就労弱者による農作業体験を実施する。
Step 5:農家と福祉団体スタッフが共に振り返り、次の課題を設定する。
Step 2:福祉団体スタッフにその作業を見学してもらう。
Step 3:作業実施の可否を判断する。
Step 4:就労弱者による農作業体験を実施する。
Step 5:農家と福祉団体スタッフが共に振り返り、次の課題を設定する。
4. 農福連携推進のためのフォーラム開催
このモデル構築事業を広く紹介するため、全国規模の農福連携フォーラムを郡山市内で開催しました。当協会は、この事業を連携して推進する郡山市および特定非営利活動法人キャリア・デザイナーズとともに、共催団体として参画しました。
フォーラム名:
ノウフクフォーラムふくしま
主催:
共催:
後援:
福島県
開催日時:
2019年11月28日(木)13:00~19:30(交流会を含む)
会場:
磐梯熱海温泉「ホテル華の湯」(郡山市熱海町)
参加費:
無料(但し交流会は参加者負担)
参加数:
約150名
参加者内訳:
農業関係:約20名
福祉関係:約60名
行政:約40名
講師および会場スタッフ:約30名
福祉関係:約60名
行政:約40名
講師および会場スタッフ:約30名

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プログラム:
Ⅰ. 基調講演
川田勝也 (かわた かつや)氏
株式会社エススリーブランディング 代表取締役社長
株式会社エススリーブランディング 代表取締役社長
テーマ:
『福島県農福連携6次化プロジェクトとSDGs』
Ⅱ. 福島県の現状共有
1. 福島県の農福連携の推進について
(福島県)
2. 郡山市農福連携推進モデル構築事業
(郡山市)

3. 福島県中通り農福連携プロジェクトについて
(郡山コスモス会)
Ⅲ. ノウフクマルシェ参加事業所のPR
会場内に特設の『ノウフクマルシェ』にて農産物の展示即売
Ⅳ. 全国の農福連携事例発表
1. 特定非営利活動法人長野県セルプセンター協議会
2. パーソナルサンクス株式会社(東京都豊島区)
3. 特定非営利活動法人ピアファーム(福井県あわら市)
4. 一般社団法人三重県障がい者就農促進協議会
2. パーソナルサンクス株式会社(東京都豊島区)
3. 特定非営利活動法人ピアファーム(福井県あわら市)
4. 一般社団法人三重県障がい者就農促進協議会
Ⅴ. パネルディスカッション

<パネリスト>
・沖村さやか
特定非営利活動法人長野県セルプセンター協議会
・中村 淳
パーソナルサンクス株式会社 代表取締役
・林 博文
特定非営利活動法人ピアファーム 理事長
・中野和代
一般社団法人三重県障がい者就農促進協議会 代表理事
・川田勝也
株式会社エススリーブランディング 代表取締役社長
・熊田芳江
一般社団法人日本農福連携協会 理事
<コーディネータ>
・吉田行郷
農林水産省 農林水産政策研究所 企画広報室長
(敬称略・順不同)
◆ 第2年度
・期間:
2020年4月~2021年3月
・目標:
農福連携コミュニティ(共同体)の構築準備と試験就農の実施
・活動:
1. 農福連携コミュニティ(共同体)参加者の発掘
・小規模農家、一般市民など
2. ジョブコーチの育成
・障がいの特性と農作業の各工程との親和性を探る
・農作業を工程ごとに分解することで、障がい者にも可能な作業を洗い出す。
・障がい者各自の相性と、農作業の現場環境との親和性を探る。
・課題抽出と最終年度に向けた行動ステップを組み立てる。
3. 提携団体による提携農家での試験就農
・小規模農家、一般市民など
2. ジョブコーチの育成
・障がいの特性と農作業の各工程との親和性を探る
・農作業を工程ごとに分解することで、障がい者にも可能な作業を洗い出す。
・障がい者各自の相性と、農作業の現場環境との親和性を探る。
・課題抽出と最終年度に向けた行動ステップを組み立てる。
3. 提携団体による提携農家での試験就農
2年目は、希望ファーム が初めて取り組むピーマン栽培と菅野(かんの)ファーム のワイン用ブドウ栽培を複数福祉施設が連携して行うためのコーディネーションを推進中です。

農場:希望ファーム
作業:ピーマン定植作業

農場:菅野ファーム
作業:ワイン用ブドウの紙笠かけ作業
(雨による病気の発生防止のため)

地元メディア 福島放送、福島民報社、福島民友新聞社の取材を受ける
このほか、連携農家にて、ニンジン手掘り作業やキュウリ収穫作業なども行う予定です。その結果を踏まえて、1年目で見えてきた課題「障がい者に適した作業の切り出し方(細分化)」等に取り組むとともに、農作業が就労弱者へ対してどのような変化をもたらすかなども調査する予定です。
◆ 最終年度
・期間:
2021年4月~2022年3月
・目標:
1. ジョブコーチ育成プロジェクトを完成させ、就農マニュアル作りに繋げる。
2. 地域住民および全国の消費者を郡山市農福連携事業への参画に導く。
2. 地域住民および全国の消費者を郡山市農福連携事業への参画に導く。
『農福連携推進モデル構築事業』おわり