第34回
もうすぐ東日本大震災から丸3年になります。少しずつ復興の気配が感じられるようになってきてはいるものの、まだまだ完全復興と言うには程遠いのが現状ではないかと思います。震災から間もないころは、募金や物資などの支援が多数行われていましたが、時が経つにつれて求められる支援も日々変わってきています。
 
今後、企業が被災地支援を行っていくにあたって重要になってくるのが、社内外からの理解です。日本フィランソロピー協会の定例セミナー「企業の被災地支援に対する社内外の理解促進のために」の中で紹介された味の素の事例にそのヒントがありました。
 
味の素は、中長期的に被災地復興に関わっていくことを宣言し、被災地域の方々と社員の方による手作りの復興支援活動を行っています。「味の素の復興支援予算は限られている。お金よりも手間ひまをかける方が長続きするのではないか」という考えで、5年~10年の長期ビジョンを掲げ、復興支援に取り組んでいます。
 
実際、現地にスタッフを派遣している味の素は、被災地での支援を進める中で被災者の心のケアという課題が浮き彫りになったと言います。その声を受けて参加型健康栄養セミナーという支援を行うことができたのも、現地にスタッ フを派遣するという手間ひまをかけたからこそです。このほか、地元の社会福祉協議会やNPOなどのパートナーとともに、知恵を出し合いながら、「男と子供の料理教室」や「栄養士を目指す学生向けのセミナー」などを行ったそうです。
 
ここからわかるように、味の素では「被災地目線」、「被災地主体」という考えが根底にあります。単に支援金や物資を送るだけではなく、あくまでも地元が主体となって、地元組織によって地域完結型のケアができるようにサポートをするというのが、味の素が考える被災地支援です。
 
もちろん現地に行かなければ100%理解することはできないと思いますが、この考えを共有するために、できる限り被災地からのメールやお客様相談センターへの電話、海外グループ会社従業員のボランティア参加者の声といった、被災地の生の声を社内に伝えるよう心がけているそうです。このような生の声を聞いた社員からは、「自社製品を毎日使ってくれていたことに喜びを感じた」、「自分たちの仕事の原点に触れるような機会に遭遇した」という声が聞かれたと言います。
 
被災地の方々の声を聞いてまず現状を理解する。社内全体で被災地支援に取り組めるように情報を共有し、社員ひとりひとりの理解を得る。「相手の立場を理解した上でできることから具体的な一歩を踏み出す」という考え方こそ「あ・い・う・え・お」の原点であると改めて気が付かされました。