< 文部科学大臣賞 >
同校は地域に開かれた教育を目指す「コミュニティ・スクール」であり、年間を通して地域住民とさまざまな交流を図っている。生徒が募金活動を行い、地域の一人暮らしのお年寄りに手作りの年賀状を送る「福招き年賀状大作戦」もその一つとして、2012年度に始まった。
きっかけは総合的な学習の時間。地域には1,500世帯もの一人暮らしのお年寄りがいること、「寂しい思いをしているお年寄りはハガキの一枚でも嬉しい」という現実を学んだ生徒が発案した。
活動は生徒会と有志を中心にスタート。初年度は9,696円を集め200枚の年賀状を送ることができた。次年度以降も数を増やしていったが1,500世帯全員分に届かない。そこで、学区内のふたつの小学校に相談し、小学生にも募金活動や年賀状を書いてもらうこととし、2016年度は83,873円を集め、1,500世帯全員に年賀状を送ることが実現。地域の人がわざわざ学校に寄付金を届けてくれたり、お年寄りからの返事が届くなど、「福招き年賀状大作戦」が世代間交流を促進し、地域を優しく元気にしている。
生徒の思いが学校全体へ、そして小学生も巻き込んだ地域全体の活動へと波及しており、授業をきっかけに子どもが高齢者の暮らしに思いを馳せ、行動につなげたことは特筆に値する。世代間交流の機会が減りデジタル化が進み、地域力が低下する社会において、地域の中で、人と人のつながりを作る意欲的で、かつ心のこもった活動を高く評価し、「文部科学大臣賞」として称えたい。
< 西武信用金庫賞 >
同校は、住宅街に囲まれた中規模校。「徳育科」などの特色ある授業を展開し、「人間性豊かで思いやりがあり、21世紀を逞しく生き抜く国際感覚豊かな子供を育てる」ことを目指している。そうした教育活動の一環として、特定非営利活動法人アジア教育友好協会が行っている「ワンコインスクールプロジェクト」に賛同し、2009年よりラオスの教育機会に恵まれない同世代の子どものために学校建設費用を集める寄付活動を行なっている。
毎年、ボランティア委員会を中心に推進。給食の牛乳パックで作った募金箱で一人500円を目標にお金を貯める。特色は、自分の頑張りや我慢を寄付にかえること。毎年全校児童の3分の2が参加し、約20万円が集まる。地域の商店街にも募金箱やポスターを設置するなど創意工夫を重ねている。
活動は教員の人事異動等により、周囲の学校(一小、二小、七小、十小、四中、中藤保育園)に徐々に拡大し、市内の6校、1園で「武蔵村山メコンの会」が発足。武蔵村山の市民の力で学校を作ることを目標に広く募金を呼びかけた結果、250万円が集まり、2016年、ラオスに「チャンヌア小学校 武蔵村山分校」が完成した。
一つの学校の取り組みが、子どもと大人、地域と学校、日本とアジアをつないで「学校」「お金」「自分」の価値を見つめる教育活動へと展開している。「人の役に立つことは素敵なこと」という児童の心を育て、地域社会に信頼の輪を育む活動を高く評価し、「西武信用金庫賞」として称えたい。
< 奨励賞 >
同校は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた南三陸町にある唯一の高等学校。生徒たちは町の復興を願い、地域内外と連携し津波で失われた町民バスを再開させた。
活動は震災前に遡る。授業でマーケティングを選択した生徒による地域活性化プロジェクトで、南三陸町を全国にPRするための調査を実施した。1960年のチリ地震津波で被害を受けた同町にはチリ共和国との友好の象徴として多くのモアイ像が設置されている。モアイ像は町の特色としてPRに活かせると考え、様々な活動を開始した。
その矢先、2011年に東日本大震災が発生。学校も被災し生徒自身も打ちひしがれる中、津波で流された町民バスを復活させようという声が上がった。オリジナルのモアイ缶バッヂ、モアイストラップなど生徒が考案したオリジナルグッズを製作販売し、収益金で新しいバスを購入して町に寄贈する計画を立てた。
2013年には450万円、2015年には200万円をバス購入資金として町に寄付。2016年に生徒がデザインした「モアイバス」が町民バスとして運行を開始した。次は町の図書館を作りたいと、オリジナルグッズの販売活動を継続中である。
震災により生徒の活動が中断した時、「今こそやるべき時だ」と励ましたのは町民の声であった。町の復興を願う生徒の地道な努力と、それを支える教員および町民の祈りにも似た強い思いに敬意とエールをおくりたい。
同校は、知的発達に障害のある児童・生徒の教育のために開校、「明るく、豊かに、たくましく、自ら考え社会に生きる人を育てる」という目標のもと、小学部から高等部まで約170名の児童・生徒が学んでいる。
中等部では、プルタブを集めると車いすと交換できることから、1988年に学内で使用する車いす取得のために収集を開始。現在は、生徒が職場実習や体験学習でお世話になった施設に車いすを寄贈している。
活動は、生徒たちが回収を呼び掛けるチラシを作成、チームを組んで学校周辺の3町内会約600軒に1軒ずつ配って歩き、その後プルタブ回収のために再度訪問。これを年3回繰り返す。1年の終わりには、手作りの栞やコースターなどのグッズと一緒に、お礼状を届けている。
生徒が学校外で住民に働きかけることで触れ合いを密にし、住民が養護学校を理解することにつながっている。訪問前には事前学習として回収の意義や挨拶の仕方、チラシ・礼状の作り方を学び、生活学習・社会体験学習として効果を上げている。
時代の変化で、プルタブも減ってきている。方法を進化させるなど、フィランソロピー精神を活かした活動の発展を期待し、生徒と教師の地道な努力にエールをおくりたい。
えいしま しろう
榮島四郎 様 (小学4年生 横浜市在住)
3歳のときに小児がんを発症。多くの手術・治療を経て、現在は学校に通えるくらい健康を取り戻している。小児がんという病気を知ってもらうこと、そして治療に役立ててもらおうと「レモネードスタンド」を開催し、これまでに30万円以上を特定非営利活動法人キャンサーネットジャパンに寄付している。
きっかけは、3年生の時に母親・佳子さんが与えた「ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん」という絵本。小児がん患者のアレックス・スコットさんが治療研究のための寄付を集めようと自宅の庭でレモネード販売を行ったことを知った四郎さんは、「僕も一人でも多くの人を救いたい」と一念発起。思いを汲んだ佳子さんと二人三脚で2016年12月、地元自治会のクリスマス会で「レモネードスタンド」を開催。病気を知ってもらうためのチラシ作りや新聞社への取材依頼なども行い支援の輪を広げた。その後は、四郎さんが通う作文教室の仲間と「みんなのレモネードの会」を立ち上げ、今年(2017年)8月、佳子さんの実家・岡山での「レモネード縁日」開催にこぎつけた。
日本では、毎年約2,000人の子どもが新たに「小児がん」と診断されるが、患者数が少なく疾患への理解や治療研究も十分とは言えない。「レモネードスタンドを長く続けたい」と張り切る四郎さんの明るさは多くの人に勇気を与え、未来への架け橋となっている。四郎さんと仲間たちの活動を称え、エールをおくりたい。
すぎさわ まさき
杉澤真生 様 (高校3年生 熊本市在住)
杉澤真生さんは宮城県仙台市出身の高校3年生。小学5年生の時に東日本大震災を体験した。その後、特待生に選ばれ、熊本マリスト学園に進学したが、昨年4月に熊本地震が発生し、2度目の大地震を体験することとなった。真生さんが暮らす男子寮も大きな被害を受け、高校も休校となって、一時仙台に帰省した。
仙台の実家に帰って思い出したのが、「他者のために生きる」というキリスト教精神に基づく学園の校訓。直後に自分と同様に帰省した生徒が東京で募金活動をすることをSNSで知り、それでは自分も仙台で、と一念発起。拡大した学生証のカラーコピーを首から下げ、手作りの募金箱を抱え、「3.11でたくさんの支援を熊本から受けました。今度は私たちが支援する番です」と書いたボードを掲げ、勇気を振り絞って、たったひとりで街頭募金を始めた。
最初の2日間で集まった募金は約2万円。翌日新聞で報じられると、一気に20万円ほどが集まった。インターネットで活動を知った熊本の友人や海外在住の日本人からも反響があり、募金活動11日間で90万円以上が寄せられ、熊本県に寄付した。今年(2017年)7月の九州北部豪雨の際も、街頭での募金活動に励んだ。二度の震災に遭う中で、率先して行動を起こそうとする無私の勇気とフィランソロピー精神にエールをおくりたい。
にゅうい じょうや
乳井丈弥 様 (高校1年生 神奈川県座間市在住)
小学生の時、母と弟二人と共に住まいを転々とし、1年後、祖母の暮らす座間市に落ち着いた経験を持つ。
2014年にたまたま児童養護施設の子どもたちをテーマにしたテレビ番組「明日、ママがいない」を見て、今なお、自分が過去味わったようなつらい思いをしている子どもたちがいることを知った。「何とか力になりたい」と、自宅近くの児童養護施設を訪問。相談の結果、資金提供の必要性を知り、募金を思いついた。中学2年生だったが、担任に募金方法なども教えてもらい、自分で道路使用許可申請のために警察署に行き、友だち数人に呼び掛けて4日間実施した。その時に集まった金額は9万円、中学3年時には、100万円の目標額を設定し、12人の仲間と募金活動を半年間で15回実施し108万円強を達成した。「児童養護施設支援の会」を作り会長に就任。仲間とともに活動し、「かながわ子ども福祉基金」に寄付を続けている。
現在の自分の幸せへの感謝の気持ち、そして、今なお親からの虐待などに苦しんでいる子どもたちも幸せに、という思いが、まっすぐでひたむきな募金活動へとつながり、友人や学校の先生、地域の人を巻き込みながら、朗らかなエネルギーを作り出している。丈弥さんの素直で熱い思いと行動にエールをおくりたい。