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第227回定例セミナー報告
テーマ: 「社会貢献担当者心得ABC」 |
講 師: | 嶋田 実名子 氏 (花王株式会社コーポレートコミュニケーション部門 CSR推進部長兼社会貢献部長) |
実施日: | 2008年4月17日(木) |
会 場: | 三井物産株式会社 地下1階 多目的ホールエリアA |
会場 |
嶋田 実名子 氏 |
● 第一部: 嶋田 実名子氏 講演 |
私は2000年から社会貢献の担当になりました。最近はCSRという枠組みの中で社会貢献に取り組む企業が増えてきています。今日は、そうした時代の変化を踏まえたうえで、改めて社会貢献の意義や位置付けについて、皆さんと考えてみたいと思います。 それではまず、企業社会貢献活動の現状についてお話したいと思います。 経団連が実施している調査によりますと、社会貢献への支出額は一社平均で四億五千四百万円、経常利益の2.18%となっています。私は、こうしたデータを毎年経営会議で説明をするようにしています。経営陣に社会貢献に関する理解を深めてもらうためには、こうした客観的な数字を定期的に報告することは重要であると考えるからです。 次に、企業環境の変化についてお話しましょう。 ここ数年、コーポレイト・ブランド力ということが良く聞かれるようになってきました。商品の性能自体の差があまり無くなってきたため、企業の「好き嫌い」で商品やサービスを選ぶ時代になったのです。それと同時に、投資家は投資を通して企業活動に影響を与えるようになっています。また、企業の透明性や公正さが求められる時代になったといえると思います。適切な情報開示を行い、企業ブランドを高めることが、大きな意味を持つようになったと思います。 そうした変化を受けて、企業は「社会を構成する企業市民」という視点に立つことが必要となりました。つまり、社会的存在の中に企業の価値創出を求めるようになってきたわけです。そして、CSRを企業の中に位置付けことによって、企業ブランド価値を向上させることが可能となるわけです。 CSR構造を支える基盤部分は、コンプライアンスと企業倫理。これが企業ブランドも支えています。ここで何か間違いが起きたら一夜にしてブランドも失墜してしまいます。 次に、企業の社会貢献の変遷について見ていきましょう。 80年代までは、企業の社会貢献活動にも陰徳という考え方があり、それを宣伝するなんてとんでもないと思われていました。90年代になると、大型イベント協賛が盛んに行なわれました。しかしバブルがはじけた後は、「企業の社会貢献活動は終わった」などと云われ、一気に勢いがしぼみます。ただ私は、バブルがはじけて以降に本当の意味での企業の社会貢献が始まったのではないかなと考えています。つまり、より効率的で地道な活動に転換して、それをきちんと情報開示していこうというアプローチです。そしていよいよ2002年頃から、CSRという概念が日本に入ってきました。それにより、CSRの一環として社会貢献を位置付ける企業が増えてきました。企業の社会的責任という枠の中で社会貢献活動を捉えると経営者の皆様の理解を得やすくなってまいりましたので、私たちの仕事はずいぶんやりやすくなりました。私は、社会貢献の定義というものは、「直接対価は求めないけれども、その企業なりの資源や専門能力を投入して社会的課題の解決に貢献すること」と捉えています。その活動を、様々なステークホルダーに公表し、交流していくことによって、社会との関係を一段と深めて会社の永続性が図れる。こういう効果があると思います。 ここで、花王の社会貢献活動について少しご紹介いたします。 当社では、「次世代を育む環境づくりと人づくり」テーマを設定し、重点活動分野を、「環境」「教育」「芸術文化」として活動を行なっています。 この三つに加え、社員参加型の活動として「ハートポケット倶楽部」という寄付プログラムがあります。これは富士ゼロックスさんが始められたもので、いい制度だなと思い、早速当社にも導入しました。 最後に、「社会貢献の必要性」について皆様と考えてみたいと思います。 まず1つめに、企業イメージの向上。本業としての事業も大切ですが、それ以外の部分で、その企業がどういう活動をしているか、社会はすごく関心を持ってくれます。 2つめは、社員のロイヤリティの向上。仕事以外のところでも社員が活躍できるようなステージがあると、会社の活性化に繋がるのではないかと思います。 3つめは、リスク管理。社会貢献活動は根本のところで事業活動を支える活動だと私は思っています。またそういう誇りを持って取り組むことも、私たち担当者には必要なのではないでしょうか。 最後にいくつか私なりの「心得」をお伝えしたいと思います。ひとつは「企業理念に合わせて方針を作る」ということ。次に、「社員を見方にする」。それから、「情報収集は足で稼ぐ」。例えば、新聞で面白い団体があったら、訪ねていく。それから、こういうセミナーにも足を運んで情報収集する。最後に、「支援哲学を持つ」ことと「ミッションを常に意識する」。こうしたポイントを念頭に置いて、独創的なプログラムを創りだすことを目指していけば、仕事が面白くなって、世界も広がります。今日はご静聴ありがとうございました。 |
● 第二部: グループ・ディスカッションで参加者がまとめた「社会貢献担当者心得10か条」 |
1.哲学を持つ 2.受益者に目線を合わせてニーズに応える 3.担当者が志・熱意を持つ 4.社員参加を心がける 5.良いアイデアや取り組みがあれば、積極的に取り入れる 6.身近なコトから始めて継続する 7.最前線の社員の声を反映する 8.NPO等との協働の場合、Win-Winの活動を工夫する 9.社内外の人脈作りを心がける 10.担当者自身が仕事を楽しむ |