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第228回定例セミナー報告
テーマ: 「コーズ・リレーテッド・マーケティングの事例を通して考える企業の社会貢献のあり方」 |
講 師: | 吉沢 直大 氏 (ダノンウォーターズオブジャパン株式会社 1L for 10L プログラム プロジェクトリーダー) 浦上 綾子 氏 (財団法人日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 企業アライアンス担当) |
実施日: | 2008年5月21日(水) |
会 場: | 朝日生命保険相互会社 24階 E会議室 (大手町サンスカイルーム) |
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● 吉沢 氏 講演 |
ダノングループのCSR活動戦略と社会的ミッション 社会貢献活動における日本の消費者トレンドとマスマーケティング このプログラムは、事業領域内で何か貢献できないかという趣旨のワークショップをドイツで実施した際に、根底となるプロジェクトが生まれました。日本でこのプログラムを立ち上げるにあたり、元々社会貢献の風土や意識が根づいた環境だったこと、またマーケティングを担当し広告予算を管理していたこともおり、ボトムアップの提案で支障なく承認を得られました。まず、社会貢献活動に関する現在の消費者トレンドについて独自に調査しました。社会貢献については、昨今はメディアでの取り上げも多いため、一般の方の関心も非常に高くなっています。しかしながら関心はあるものの時間がない、やり方がわからないなどの理由で、実際に参加できてない人がとても多いことに着目しました。 また、クールビズ・エコバックなどファッション性や手軽さのあるものは広がりをみせているのも現在のトレンドですので、このような部分をプログラム組み立ての際に考慮しました。 またマーケティングの面で、ボルヴィックのように広く知られているブランドならメディアに取り上げてもらう事やパッケージ等のツールを使う事で、消費者に直接参加を投げかけることができます。マスマーケティング商品だからこそ、事業領域の中で消費者参加型の持続的な社会貢献活動ができるのではとの思いが強まりました。 1L for 10L プログラムとは 第1の目標として、現在最も水問題が深刻な国のひとつであるアフリカ・マリ共和国に清潔で安全な水を提供する支援活動の実現を掲げました。そして第2に、消費者への投げかけによる日本におけるアフリカの水問題・水支援についての認知拡大と理解向上を目指しました。 このプログラムには4つのポイントがあります。1つは事業領域に関連する世界的問題への取り組みだということです。世界では現在、水が原因で毎日4100人の子どもが亡くなっています。これらの情報を水のブランドが発信することで、メッセージが消費者にわかりやすく伝わります。 2つめに持続性を重視した支援内容であること。これはダノングループのポリシーでもあります。売上の一部をユニセフに寄付することによりマリに井戸を作り、且つ最低10年は維持保障できるよう人材の育成やメンテナンスの物資供給等、持続的に必要な水量が確実に確保できる事を重視しました。 3つめに消費者が参加しやすい支援のしくみであること。事前調査で着目した「手軽に参加できる」というニーズに応えることにより、自分の貢献がわかりやすいと消費者にも評価されました。 最後に、プログラムを効果的に広める告知活動です。テレビコマーシャルや店頭活動、文字情報での広報活動とウェブページ、以上4つについてマスマーケティング商品ならではの告知活動を実施しました。 昨年の支援結果と今後の目標 |
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● 浦上 氏 講演 | |
ユニセフとは 企業とのパートナーシップ ユニセフの収入の内、民間/非政府組織による支援が約3分の1を占めています。2000年を前に、国連では、政府のみならず、企業を含む民間セクターとのパートナーシップを推進していくという、新しい方針が示されました。 これに基づき、ユニセフが策定したガイドラインには2つのポイントがあります。まずユニセフの理念や価値観を認め受容してもらうこと、そして適切なバランスが保たれたパートナーシップであること。ユニセフが企業や商品サービスを推奨していたり営利活動を行っているかの印象や誤解を与えたりしないか、という点も含まれます。私たちは、これらの点に基づき、企業とのパートナーシップを検討しています。 1L for 10L プログラムについて 今回の支援国マリ共和国は、国土の約6割以上が砂漠・半砂漠、5歳未満児死亡率は世界6番目に高く、最貧国のひとつであり、水のアクセスがもっとも困難な国のひとつです。さらに農村部になると、状況はより厳しくなります。水支援事業においては、質・量・アクセスの面での問題解決、またコミュニティの積極的な参加・関与と運営による持続性の確立がポイントです。持続性には、住民が主体的に関わることが欠かせず、非常に重要です。 1L for 10L プログラムにおけるポイントとしては、第1に水に関する問題を広く発信し、同時に支援するためのしくみを提供したことです。第2にパートナーシップにおいて、それぞれの強みを活かした役割分担が非常に明確だったことです。ダノンさんは広く水の問題を発信し、消費者が参加できるしくみを提供する。ユニセフは水の問題理解のための情報を発信し、支援プロジェクトを実施する。今回のケースは企業の主体性が明確だったからこそ世の中に広く受け入れられと思います。検討段階においても、懸案事項の大小に関わらず、オープンに協議することができ、お互いの考えや価値観を理解することができたことも、大きかったと感じています。 |