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第228回定例セミナー報告


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第228回定例セミナー【報告】

テーマ:
「コーズ・リレーテッド・マーケティングの事例を通して考える企業の社会貢献のあり方」
講 師: 吉沢 直大 氏
(ダノンウォーターズオブジャパン株式会社 1L for 10L プログラム プロジェクトリーダー)
浦上 綾子 氏
(財団法人日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 企業アライアンス担当)
実施日: 2008年5月21日(水)
会 場: 朝日生命保険相互会社 24階 E会議室 (大手町サンスカイルーム)
● 吉沢 氏 講演
ダノングループのCSR活動戦略と社会的ミッション

ボルヴィックは現在日本で高い売上げを誇る輸入ナンバーワンのブランドですが、当社はダノングループの日本法人として1994年に設立された現在社員数30名余りの小さな規模の会社です。 ダノングループの企業基盤として「企業の社会的責任は事業だけで終わらず、関わるすべてに責任を持つ」というダノン創始者の発言があります。これがCSR活動を考える際の戦略であり、「事業と社会の持続的な発展を目指す」というデュアルコミットメントとして位置づけられています。もうひとつの基盤としては、 水や食品を扱っている事業ですので、早期より「健康」を軸として捉えています。グループのミッションとしては「ダノンはただのトレードマークではなく、信頼(トラスト)マークでなければならない」つまり信用されるようなブランドでなければならないとの考えが掲げられています。

社会貢献活動における日本の消費者トレンドとマスマーケティング

このプログラムは、事業領域内で何か貢献できないかという趣旨のワークショップをドイツで実施した際に、根底となるプロジェクトが生まれました。日本でこのプログラムを立ち上げるにあたり、元々社会貢献の風土や意識が根づいた環境だったこと、またマーケティングを担当し広告予算を管理していたこともおり、ボトムアップの提案で支障なく承認を得られました。まず、社会貢献活動に関する現在の消費者トレンドについて独自に調査しました。社会貢献については、昨今はメディアでの取り上げも多いため、一般の方の関心も非常に高くなっています。しかしながら関心はあるものの時間がない、やり方がわからないなどの理由で、実際に参加できてない人がとても多いことに着目しました。 また、クールビズ・エコバックなどファッション性や手軽さのあるものは広がりをみせているのも現在のトレンドですので、このような部分をプログラム組み立ての際に考慮しました。 またマーケティングの面で、ボルヴィックのように広く知られているブランドならメディアに取り上げてもらう事やパッケージ等のツールを使う事で、消費者に直接参加を投げかけることができます。マスマーケティング商品だからこそ、事業領域の中で消費者参加型の持続的な社会貢献活動ができるのではとの思いが強まりました。

1L for 10L プログラムとは

第1の目標として、現在最も水問題が深刻な国のひとつであるアフリカ・マリ共和国に清潔で安全な水を提供する支援活動の実現を掲げました。そして第2に、消費者への投げかけによる日本におけるアフリカの水問題・水支援についての認知拡大と理解向上を目指しました。 このプログラムには4つのポイントがあります。1つは事業領域に関連する世界的問題への取り組みだということです。世界では現在、水が原因で毎日4100人の子どもが亡くなっています。これらの情報を水のブランドが発信することで、メッセージが消費者にわかりやすく伝わります。 2つめに持続性を重視した支援内容であること。これはダノングループのポリシーでもあります。売上の一部をユニセフに寄付することによりマリに井戸を作り、且つ最低10年は維持保障できるよう人材の育成やメンテナンスの物資供給等、持続的に必要な水量が確実に確保できる事を重視しました。 3つめに消費者が参加しやすい支援のしくみであること。事前調査で着目した「手軽に参加できる」というニーズに応えることにより、自分の貢献がわかりやすいと消費者にも評価されました。 最後に、プログラムを効果的に広める告知活動です。テレビコマーシャルや店頭活動、文字情報での広報活動とウェブページ、以上4つについてマスマーケティング商品ならではの告知活動を実施しました。

昨年の支援結果と今後の目標

1年目の結果としては、マリ共和国内での支援の実現と国内の認知向上いずれも目標を達成できました。マリ現地では、井戸の建設により、清潔で安全な水は衛生的で健康な生活をもたらし、また長時間の水汲みから解放されることで農作業へ専念することができ、子どもは就学率が向上することが見込まれています。 何より、水が出ることにより現地の人達の喜びや嬉しさを目の当たりにし、水が笑顔を増やしているんだという実感を得ることができました。 また昨年度行った調査によると、今アフリカでどういう問題が起きていてこのプログラムでどう改善されているのかということについて、関東エリアでは半数の認知を得ることができました。水問題の改善を最優先に考え実施し、売上げ増加は目標にしていません。しかし、結果として売上げは30%増加しました。ただ、同時期に新商品を発売した等の他要因もあるのでプログラムが売り上げ増加に貢献したとは一概には言えませんが、反響は大きかったので一つの大きな要因であったのではないかと思います。進めていく上でのポイントは、企業と個人の両方でコミットしていくことです。個人としては、新領域ですので、いろいろなことにチャレンジをしていこうというコミットがありました。企業としては、一人ではできないプロジェクトなのでユニセフさんや広告制作に関わってくれた方々も含めて、社内外問わずプロジェクトメンバーと気持ちを共有し、ひとつの目標に向かっていこうというコミットがありました。子どもたちの笑顔を見ると苦労はなくなり、が高いモチベーションを持って取り組んでいき、物理的な困難は多いですが、活動の意義を感じるとを共有することで乗り越えていけるし、長期的にやっていくことが可能になるのではないかと思います。2008年度の目標としては、まずは日本国内でより多くの理解を得ること、より多くの方の賛同を得ることを目指し、結果としてさらに多くの子どもやコミュニティに清潔で安全な水を供給することに貢献したいと思います。
● 浦上 氏 講演
ユニセフとは

まず最初にユニセフ(国際連合児童基金)は「子どもの権利」を守る国連機関です。ユニセフは18歳未満の子どもを対象に、子どもの成長段階に合わせた支援を行っています。赤ちゃんが生まれる前、つまり、妊産婦のケアから、乳幼児期の総合的なケア、学齢期には初等教育へのアクセス、また、労働や暴力、搾取からの保護などの支援事業を展開しています。 国連ミレニアム開発目標に基づき作成した中期事業計画で、ユニセフは、子どもの生存と発達、教育、保護、HIV/エイズ、子どもの権利の実現の5つの分野に重点を置いています。ユニセフが支援事業を実施する場合、まず、当該国の政府と協力協定を結び、政府のパートナーとして活動します。子どもたちにとって一番望ましいことは、「子どもの権利が守られた社会で生活し、成長すること」この実現のため、ユニセフは、政府が子どもの権利が守られた社会を作れるように、人材育成を含めた、長期的な計画に基づき支援を行います。 ユニセフには、世界で36の国内委員会があり、民間部門におけるユニセフへの支援の最大化という使命を担っております。財団法人日本ユニセフ協会はユニセフ日本委員会にあたります。 実は日本で寄せられる募金の内、約八割が個人からのものですので個人の方の理解と善意により支えられていると言っていいと思います。

企業とのパートナーシップ

ユニセフの収入の内、民間/非政府組織による支援が約3分の1を占めています。2000年を前に、国連では、政府のみならず、企業を含む民間セクターとのパートナーシップを推進していくという、新しい方針が示されました。 これに基づき、ユニセフが策定したガイドラインには2つのポイントがあります。まずユニセフの理念や価値観を認め受容してもらうこと、そして適切なバランスが保たれたパートナーシップであること。ユニセフが企業や商品サービスを推奨していたり営利活動を行っているかの印象や誤解を与えたりしないか、という点も含まれます。私たちは、これらの点に基づき、企業とのパートナーシップを検討しています。

1L for 10L プログラムについて

今回の支援国マリ共和国は、国土の約6割以上が砂漠・半砂漠、5歳未満児死亡率は世界6番目に高く、最貧国のひとつであり、水のアクセスがもっとも困難な国のひとつです。さらに農村部になると、状況はより厳しくなります。水支援事業においては、質・量・アクセスの面での問題解決、またコミュニティの積極的な参加・関与と運営による持続性の確立がポイントです。持続性には、住民が主体的に関わることが欠かせず、非常に重要です。 1L for 10L プログラムにおけるポイントとしては、第1に水に関する問題を広く発信し、同時に支援するためのしくみを提供したことです。第2にパートナーシップにおいて、それぞれの強みを活かした役割分担が非常に明確だったことです。ダノンさんは広く水の問題を発信し、消費者が参加できるしくみを提供する。ユニセフは水の問題理解のための情報を発信し、支援プロジェクトを実施する。今回のケースは企業の主体性が明確だったからこそ世の中に広く受け入れられと思います。検討段階においても、懸案事項の大小に関わらず、オープンに協議することができ、お互いの考えや価値観を理解することができたことも、大きかったと感じています。