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第232回定例セミナー報告
テーマ: 「グローバルに展開する企業とNGOの協働プロジェクト 〜リコーとWWFジャパンの事例から〜」 |
講 師: |
・ 岸 和幸 氏(株式会社リコー 社会環境本部環境コミュニケーション推進室 スペシャリスト) ・ 粟野 美佳子 氏(財団法人世界自然保護基金ジャパン 法人グループ長) |
実施日: | 2008年10月16日(木) |
会 場: | 株式会社東芝 |
今回は、9月の「国際協力NGOによる協働企画プレゼンテーション・コンペ」の続編として、実際にパートナーシップを組んで海外でプロジェクトを推進している事例紹介を行いました。 講師としてお話いただいたのは、マレーシアでのオランウータン生息域回復プロジェクトを推進している株式会社リコーの岸氏と、事業パートナーであるWWFの粟野氏です。 講演前半では、まず岸氏からリコーグループの企業理念と、同社が全世界で推進する「森林生態系保全プロジェクト」について解説していただきました。 社会的責任に対する経営トップのコミットメントが非常に重要であるということは良く言われますが、同社の取り組みがここまで徹底して実践されている裏側では、『生物多様性は人間社会が存続していく上で重要な基盤であり、「健全な生態系の持続」なくしては「生物多様性の保全」はありえない』という認識を強く持った組織の本気度と担当者の熱意があることが、お話から伺えました。尚、岸氏の生態系保全に関する知識は、「企業の担当者の域を超えて、ほとんどNGOの専門家レベル」(粟野氏談)とのこと。 その後、粟野氏からは、「なぜリコー社との協働プロジェクトがうまくいっているのか」、その理由についてお話いただきました。 粟野氏が挙げた秘訣は、以下の二つです。 @評価の基軸がぶれない。 協働でのプロジェクトを企画する場合、企業の目的とNGO側の目的が一致するのが理想だが、そのようなケースは稀である。また、必ずしも一致しないと駄目なわけではない。この点、リコー社の場合は、プロジェクトの目的に「地域住民の生活安定」という視点を入れているため、取り組み姿勢が非常にNGOに近い。企業プロジェクトは「木を何本植えた」という量的評価にこだわる傾向が強いが、リコー社では「地域社会で持続的な生態系保全の枠組みがどのようにできているか」という質的評価を重んじているため、NGOとしても非常に協働がやりやすい。 | 岸 和幸氏 |
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粟野美佳子氏 |
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ディスカッション (進行役:当協会理事長 高橋陽子) |
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A現場感を大事にする。
本社からの指示に従ってプロジェクトを進める企業が多い中で、リコー社では現場の課題や判断を非常に重要視している。担当者自ら現場に足を運び、地元住民や自治体にヒヤリングを行なって評価をするため、NGOによる評価を鵜呑みにしない。そのため、プロジェクトの継続や次のステップに関する判断を的確に行なうことが可能となる。
後半のディスカッションでは、講師から「パートナーシップを組む上で重視しているのは、先方の担当者との信頼関係。こちらの意図をきちんと伝えていく姿勢も必要」(岸氏)という助言や、「企業が社会貢献を行う際に、まず会社の目的や、どういう対外的評価が欲しいかを考えることが重要。そこがきちんとしていれば、それに合ったプロジェクトやパートナーが見えてくる。それが戦略的フィランソロピーということではないか」(粟野氏)という意見が出されました。参加者からは「理念が大事ということがよくわかった」、「具体的なヒントがもらえた」という感想が寄せられています。 参考URL リコーグループの環境経営 http://www.ricoh.co.jp/ecology/ オランウータン生息域回復プロジェクト http://www.ricoh.co.jp/ecology/society/01.html WWFジャパン マレーシア森林回復事業 http://www.wwf.or.jp/activity/forest/lib/2000Malaysia.htm |