< まちかどのフィランソロピスト賞 >
さとう_ただし
佐藤 忠 様 (北海道千歳市ご在住)
そうやぐん さるふつむら
佐藤忠さんは1949年生まれ。稚内に近い宗谷郡猿払村出身で、現在は北海道千歳高校の定時制に通う65歳の高校生である。両親は終戦後すぐに樺太から引き揚げ、農業と酪農を営んだが、苦しい生活で高校進学は果たせず、料理人として修業を積み、1976年に千歳市で料理店を開業した。
しかし年々「学びたい」という思いは募った。独学を試みるも成果がなく困惑していたところ、北海道千歳高校の定時制が広く門戸を開いていることを知り、60歳で入学を決意。2014年2月に店をたたみ、同年4月から定時制高校生活をスタートさせた。
毎日午前3時から7時までが勉強時間で、午前9時からは市内の高齢者福祉施設で調理担当のパートとして働き、夕方から登校する。そうした生活の中から、毎月の給料をこつこつ貯めて、2015年1月、「若い人に役立ててほしい」と千歳市の奨学基金へ100万円を寄付。この奨学基金は、経済的に修学が困難な高校生や大学生などに給付されており、奨学金枠は65名。高校生は月額7,000円、大学生は月額10,000円で返済は不要である。
佐藤さんは、子どもが小さいときには、自治体の夜間保育園を利用しながら店を切り盛りしてきた。商売できたのもそうした施設のおかげ、学ぶことができるのも地域のおかげ。若いころの自分のように、経済的困難を抱えながらも就学意欲のある高校・大学生をできる限り応援しようと、今も毎日の生活費を切り詰めて寄付のための貯金を続けている。
自ら学びつつ次世代へエールを送る姿は、今後の自助・共助・公助の好循環の模範であり、そのすがすがしい愛情とたゆまぬ努力に敬意を表し「まちかどのフィランソロピスト賞」を贈るものである。
< 特別賞 >
しずく_あき
雫 有希 様 (埼玉県越谷市ご在住)
雫有希さん(リングネーム)は1986年生まれの女子プロレスラーである。上智短期大学在学中にレスリングを始め、編入学した慶応義塾大学でレスリング部に入部して全日本学生選手権で準優勝。26歳で僧侶資格を取得し、プロレスと両立させている。
雫さんの母親は、越谷市で浄土宗寺院の住職を務め、10年前から同宗派である長野市の善光寺大本願
※ の社会福祉法人が運営する幼児院にお菓子などを贈っていた。そうした母親の影響を受け、雫さんは「自分も何か協力したい」と、大学卒業後の2010年夏に学生プロレス出身者を集め、寺院の縁日でチャリティープロレス興行を実施し、収益を同乳児院に寄付。その縁で、同乳児院を訪れた際、虐待を受けた子どもの多さに驚き、育児ノイローゼに悩む親たちの苦労と支援の必要性を知ることとなった。
2013年、趣旨に賛同したレスラー仲間たち6人と「きらきら太陽プロジェクト」を発足。毎年チャリティー興行の収益を寄付する活動を継続し、寄付累計額は126万円となった。
同プロジェクトの興行は10回を超え、今では、縁日にはプロレス見たさに県外からも人々が大勢集まる。興行収益が増えているため、今年からは雫さんのレスリング練習場がある横須賀市の児童福祉施設への寄付も予定している。今後の活動の輪の広がりに期待を込めて「特別賞」を贈呈したい。
※善光寺大本願…善光寺の創建(642年)当初からその歴史を共にしてきた尼僧寺院。