◆青少年フィランソロピスト賞
< 文部科学大臣賞 >
かとう___やしろ
加東市立社小学校 (兵庫県加東市)
同校はボランティア委員を中心に、ネパールの小学校建設支援のための「お年玉募金」を28年間継続。累計約250万円の寄付は小学校10校の整備に役立てられている。
きっかけは1987年、同校で開催したネパールの写真展。衛生環境の良くない状況や小学生が校舎もない過酷な状態で勉強していることを知った児童は、翌年1月、お年玉の一部を持ち寄って、78,000円を寄付。首都カトマンズの病院で設備購入費に使われた。翌年からは現地の小学校整備に協力するようになった。2003年からは兵庫県宝塚市のNPO法人「ヘルプ・ネパール・アソシエーション・ジャパン」に募金を託している。
阪神・淡路大震災の際には、ネパールの児童が、ジャガイモを売るなどして得た7,000円を同校へ送金。ネパールとの絆は、一時期、道徳の教科書に掲載され、その内容は今も全児童に読み継がれている。
2011年3月の東日本大震災、また、今年(2015年)4月のネパール地震の際もボランティア委員の児童は「自分たちも何かできないか」と教員に相談、緊急募金活動を行うことを決め、集会で全校児童へ協力を呼び掛け、保護者、地域住民にもチラシを配布するなどの工夫をして働きかけた。ネパールへの支援から始まった募金活動は、児童の「恩返し・恩送り」の心、公共心を醸成し、同校の文化として定着、発展し続けている。
児童の他者を思いやる気持ちや主体性を伸ばす教員の力、活動をつないできた児童、地域の力に敬意を表し、「文部科学大臣賞」として称えたい。
< 奨励賞 >
しらかわだい
神戸市立白川台中学校 (神戸市)
同校は学校教育の柱としてボランティア活動を位置づけ、「中学生の目線で地域社会の課題を考え、できることを実行する」との考えで、全生徒がボランティアクラブの一員として、年間を通して様々な活動に参加している。
活動に必要な資金の一部は駅頭や、地元企業や福祉施設等、近隣約40事業所での募金活動で調達。毎年10~20万円を東日本大震災や新潟県中越地震等の被災地支援や地域の独居高齢者に年賀状を送る福祉活動等に役立てている。
昨年(2014年)の兵庫県丹波市豪雨災害の際には、生徒から「何かできることをしたい」という声があがり、現地で不足している雑巾を地域に呼びかけて収集、寄贈するほか、現地でのボランティア活動も行い、有志生徒、教員、地域住民がともに汗を流した。今年(2015年)のネパール地震の際も緊急募金を呼びかけるなど、「できることを実行する」という意識が生徒の中に浸透している。また、活動時、生徒が地域住民に働きかけることによって、学校と縁遠かった人も関わるきっかけになり、行事や授業への協力者が増えるなど応援の輪が広がっている。
中学生が懸け橋となって学校と地域の連携を促進している好例であり、生徒、教員、地域住民の信頼を育む地道な努力に敬意を表し、その更なる発展を期待して奨励賞を贈るものである。
< 奨励賞 >
千葉県立銚子商業高等学校 (銚子市)
同校では3年次に、課題研究の授業を設け、生徒がチームに分かれて様々なテーマに取り組む。2014年度は3年生10名が、地域活性化をテーマに経営難が続く地元路線・銚子電鉄を応援するプロジェクトを立ち上げた。
当初は車内アナウンスの改良や吹奏楽演奏などを考えたが、同社社員との話し合いで、同年1月に脱線した車両の検査・修理代に1,500万円超、車輪だけでも500万円が必要という状況を知り、修理代の資金調達を支援する取り組みを開始した。
インターネットで小口の寄付を募るクラウドファンディングの活用を決め、目標金額を300万円に設定。ウェブサイトに掲載する文章を何度も練り直し、寄付者への特典は銚子電鉄に相談して検討を重ね、教員はメディアへのリリースや卒業生への呼びかけなどに協力した。
開始から2ヶ月で全国の鉄道ファンなど415人から395万円が集まった。それ以外にも地域住民や卒業生、同級生からも寄付が集まり、物品販売収益金を含め約500万円が銚子電鉄への寄付となった。残りの修理費用を同社が捻出し、修理を終えた車両は4月から運行を再開した。プロジェクトは後輩に引き継がれ、電車内での名産品販売やイベント等での収益金寄付を継続している。
地域社会に勇気と希望を与えた高校生の意欲と行動力、それを支えた教員の信念に敬意を表し、今後の地域発展につながることを期待して奨励賞を贈るものである。