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〜個人の寄付文化醸成のために〜 「まちかどのフィランソロピスト賞」<一般部門>・<青少年部門> 受賞者決定

社会に役立つ寄付を行なった人を顕彰する「まちかどのフィランソロピスト賞」。2010年度は、全国より、一般部門48件、青少年部門53件のご推薦をいただき、 選考委員による書類選考およびヒアリング選考を経まして、下記の通り、受賞者が決定しました。
尚、本年度の青少年部門は、平成22年度日本郵便年賀寄附金助成事業「青少年フィランソロピスト賞」(文部科学省後援)として特別開催いたしました。

今年度の募集概要です

「まちかどのフィランソロピスト賞」

  • 若槻 一夫(わかづき・かずお)氏/広島市


「青少年フィランソロピスト賞」

  • 【文部科学大臣賞】
    大阪府立長吉高等学校/大阪市平野区
  • 【奨励賞】
    大阪府立東住吉高等学校/大阪市平野区
  • 【奨励賞】
    長野県立大町北高等学校/長野県大町市
  • 【奨励賞】
    東京都江戸川区立小学校/東京都江戸川区
  • 【奨励賞】
    東京国際学園高等部/東京都渋谷区
<贈呈式> たくさんのご参加・ご支援ありがとうございました。
日時 平成22年12月2日(木) 15:00〜18:00(受付開始 14:30〜)
  • 贈呈式および活動発表
    15:00〜18:00
  • 懇親会
    18:15〜19:30 (軽食をご用意しております)
    ♪ミニコンサート♪
    ご歓談のひとときに、デキシーランドジャズの ミニコンサートを予定しております。
    演奏:外山喜雄とデキシーセインツ
会場 日本プレスセンタービル10階ホール
(東京都千代田区内幸町2-2-1 TEL 03-3580-1581)

贈呈理由

まちかどのフィランソロピスト賞 若槻 一夫 氏

若槻一夫さんは1935年(昭和10年)、島根県仁多郡奥出雲町亀嵩地区に8人兄弟の7番目として生まれる。1972年から、同地区の75歳以上のお年寄り全員に「敬老の日」のプレゼント を続けており、その累計は3,500万円以上にのぼる。
若槻さんの父親は算盤職人だったが家計は苦しく、家族全員で田畑の仕事や 薪を売るなどして生活を支えていた。 高校進学も叶わなかったが、担任教諭の「高校へ行くことだけがすべてではない。努力次第、考え方次第で人生はどう変わるか わからんのだぞ」との言葉に勇気づけられた。
中学卒業後、地元で左官見習いを始め、21歳の時、左官道具と片道切符を手に広島で働くことになった。腕の良さが評判となり、「独立するために土地を買わないか」 という話が持ち上がった。資金がなくてあきらめかけた時、故郷の人がお金を貸してくれた。
23歳で独立。必死に働いたが、25歳で父親が、35歳で母親が他界。両親にもっと恩返しをしたかったと思っていた時、「敬老の日に座布団を贈る」という記事を目にし、 「故郷のお年寄りに贈りものをすることで両親も喜んでくれるのでは」とプレゼントを始めた。また、2001年から3年ごとに、亀嵩小学校の3年生から6年生を広島市民球場 (現:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島) へ招待。さらに、私財を投じてふるさと庭園「望ケ丘」(3,300u)を整備し、入園無料で地域に開放するなど、故郷への恩返しを 続けている。
苦しいとき、つらい時、支えになったのは大切に育ててくれた両親であり、お世話になった人たちであり、懐かしい亀嵩の風景だった。 「今の自分があるのは 亡き両親と故郷のおかげ」との思いは今も消えない。地道に人生を積み上げながら、親への恩、故郷への感謝の念は、誰しも心に留めるべきものであり、それが社会に灯をともす ものでもある。その人生に敬意を表し、まちかどのフィランソロピスト賞を贈呈するものである。

【文部科学大臣賞】 大阪府立長吉高等学校

長吉高等学校は1998年より「チャリティーリレーマラソン」を実施し、ネパールの子どもたちの就学支援を行なっている。チャリティーリレー マラソンは趣旨に賛同する人から1キロを1円換算で、1口100円の寄付を募り、ランナーは襷をつなぎながらゴールを目指すもの。 その累計は約1,000万円にのぼり、今日までにネパールに小学校4校を建設、300名近くの子どもたちに奨学金を贈っている。
同校は中国からの 帰国生を積極的に受け入れるなどアジアとの交流を大切にしてきた。1997年、前校長が亡くなり、香典をすべてネパールの学校建設に寄付したのを機に、 校長の遺志を継いでネパールの子どもたちの就学支援を行なうようになった。1998年と2001年には和歌山県潮岬から京都府丹後半島の経ケ岬までの 500キロを走る「チャリティー日本横断リレーマラソン」を実施。市町村や学校に立ち寄りネパールの教育状況を訴えながら走り続け、集まった寄付金480万円で 前述の4校の小学校を建設した。その後、「学校があっても学費が払えない」という子どもたちの現実を知り、1999年からは、文化祭で奨学金を贈るための 「チャリティー24時間リレーマラソン」を実施。集まった寄付金で20名分の奨学金を贈ったことを機に奨学基金「長吉スカラシップ」(2007年に「ジャパン ハイスクール スカラシップ」に改称)を設立した。運営はNGOラルパテの会が行なう。
2002年からは、夏休みを利用して「チャリティーツアーオブ淡路島250キロ」をスタート。 他校にも参加を募り、大阪府内の参加校と共に3日間かけて、淡路島の高校に立ち寄りながら寄付を呼び掛けている。これら二つの活動には毎年、ランナーとして、 寄付者として、あるいは運営ボランティアとして、教職員、卒業生、PTA、近隣住民等が参加。同じ目標に向かって力を合わせる仲間、多くの人の思いと行動が ネパールの子どもたちの就学支援として実を結んでいる。
生徒たちの思いが周囲の人の心を興し、活動を広げてきた過程は、若者の心に灯を灯すものとして大いに 称賛されるべきものである。文部科学大臣賞として称え、広く世に示していきたい。

【奨励賞】 大阪府立東住吉高等学校

東住吉高等学校では、長吉高等学校の活動に触発され、2007年よりネパールの子どもたちへ奨学金を贈る「チャリティー100qリレーマラソン」を 実施。
ランナーは襷をつなぎながら1周250メートルの校庭をリレーでつないで400周し、趣旨に賛同する人から1キロにつき1円換算で1口100円の 寄付金を募る。寄付金は奨学基金「ジャパン ハイスクール スカラシップ」(運営:NGOラルパテの会)を通してネパールの小学生に贈られ、これまでに 85人の子どもたちが学校に通っている。
2007年、長吉高等学校より赴任してきた教諭から「ネパールでは学校数が足りない上、多くの子どもたちが貧困のために 学校に通えず、小学校を卒業できるのも4人に1人」と教わったことをきっかけに、「自分たちもできることをしたい」とボランティア部、生徒会を中心に 「チャリティー100qリレーマラソン」実行委員会が立ちあがった。以来、毎年一回、有志の生徒、教職員、PTA、近隣住民など約2,000名あまりが参加する地域行事 として定着している。
特筆すべきは実行委員会メンバーらが校内や駅前での募金活動をはじめ、近隣の商店を一軒一軒訪問し、趣旨を説明しながら依頼していることにある。 2007年は約10万円、2008年は約20万円と支援の輪は年々広がり、昨年の協力店舗は約140店、30万円近くが集まるようになり、地域での支援の輪が広がっている。
生徒たちのまっすぐな行動力と、新しいことへ挑戦する勇気、周囲を動かすための知恵と工夫が生徒自身の自信につながり、地域そのものを温かく活力あるものにしている。 次世代を担う若者たちに大きな希望を与えるものとして称賛に値する。

【奨励賞】 長野県立大町北高等学校

大町北高等学校は、1985年から「アジア・アフリカ難民支援運動」として、主にマリ共和国への物資を寄贈している。生徒が各家庭から回収した段ボール箱で200箱分もの物資とともに 手紙を贈っている。
1985年に、当時の3年生の生徒が学園祭でバザーの売上の使途を検討し、大町市民から回収した12,000枚の風呂敷をアフリカに贈ったところからスタートして以降、 全校の生徒が参加する活動となっている。生徒は班ごとに大町市内の2,000軒以上の家庭を訪問し、毛布や衣類、靴などの物品を回収、その選別や箱詰めなども分担し、輸送費は、 文化祭のバザーの売上金から調達している。
また、2001年には、バザーの売上の繰越金170万円で、マリ共和国のジャラブグ村に水を引くためのポンプを贈った。生徒の自発的な意思を、 地域の人々、学校、親が応援する形となり、地域全体で取り組む活動となっている。生徒たちの素直な思いと自発性が如何なく発揮された好例であり、また、身近な学校生活の中で可能な 活動であり、多くの学校に広められるものであるとともに、その献身的な努力とチームワークは大いに称賛されるものである。

【奨励賞】 東京都江戸川区立小学校

東京都江戸川区の公立小学校では、子どもたちの思いやりの心を育むことを目的に1979年から「お年玉募金」を行なっている。31年間の寄付金額の累計は2,000万円以上にのぼる。
「お年玉募金」は、1979年当時の江戸川区の校長会で提案され、社会福祉協議会との連携でスタートした。参加は、各校の自由意思。各校で募金を推進する委員になった児童は、 年明けの登校時間などに募金箱を持って校門に立ち、募金を呼び掛ける。2009年度は、13校の児童たちから18万円余の寄付が集まった。寄付金は委員が区長に手渡し、区内の高齢者や 障害者団体や施設などで活用される。子どもたちの誇らしげな笑顔が印象的だという。
この実施には、保護者の理解が不可欠であり、そのための教師の努力が見逃せない。子どもたちの、 人を思いやる心、自分たちの地域を愛する心を醸成するものとして、重要な教育活動にもなっており、今、失われつつある助け合いの心はコミュニティの再生を可能にするものとして、 その意義は大きい。子どもたちの素直な思いと行動、それを支え続ける小学校の教育力に敬意を表する。

【奨励賞】 東京国際学園高等部

東京国際学園高等部は、1996年より、貧困に苦しむラオスの子どもたちを支援する活動をスタート。「途上国で、学校に通いたくても通うことができない子どもたちのために、 自分たちの手で学校を贈りたい」という生徒たちの発案により、同じアジアの地域で、学校が5000校も不足しているラオスへの支援を決定した。フリーマーケットや募金活動ですでに 6つの学校を建設(一校の建設費用は約350万円)。また、イベント等を通じて、多くの人にラオスの現状を知らせている。
 同校は、不登校の生徒や在来の学校になじまない生徒を受け入れて 教育する高校。各クラスの国際交流委員が中心となり、文化祭のクラス模擬店やバザーの収益、フリーマーケットなどに参加した収入に加え、全クラスに募金箱を設置したり街頭募金を するなどし、建設資金を集める。日頃から文房具類も集め、ラオスの学校に寄付をしている。また、2007年と2010年に代々木公園で「ラオスフェスティバル」も開催し、フリーマーケットでの 売り上げ金などを寄付している。生徒の中から毎年30〜40人がラオスの現地を訪問する。活動の委員を務める生徒からは、「貧しくて学校に行けない子が多いラオスについて知ったことで、 自分のことを考えるきっかけになった」という感想もあり、今後も活動は継続していく予定だ。
自らの有用感、自己尊重感を醸成するものとして、生徒の成長も著しい。等身大の自分自身から 出発した活動の実績と努力に心から敬意と称賛を贈るものである。