20周年記念フォラム
プログラムに戻る
◆パネルディスカッション
子どもたちに引き継ぐ社会を創造する企業・個人のあり方とは
堀田 力 氏 木全ミツ氏 矢崎和彦氏 木川 眞 氏 櫻庭英悦氏
櫻庭 英悦(さくらば・えいえつ)氏
農林水産省 大臣官房審議官

日本の最後の強みである農山漁村を建て直したい
 東日本大震災後の応急用食料の調達に際しては、自衛隊や本日パネリストでいらっしゃるヤマトさんをはじめ、いろんな方のご支援をいただき、ピーク時に1日150万食を届けました。
 その中で行政側に、縦割りの問題があったことは否めません。例えば、米軍は、被災地をヘリで飛んでいて、現地でニーズがあると思ったら即座に食料、水、毛布を降ろしていくという対応をしていました。他方で、行政側は、市町村が県に要請し、県が内閣府に要請をつなぎ、ようやく政府本部としての指示が農林水産省に来て、食料調達に入ることが基本になっていました。また、いざ届けようという時も輸送手段のマッチングで苦労しました。
 また危機管理のバックアップ体制が準備されていなかったという反省もあります。秋田には巨大な石油備蓄基地がありますが、精製する場所がありませんでした。ガソリン、軽油は横浜から輸送したのですが、新潟から秋田、青森を通って岩手に持っていきました。秋田、山形から岩手方面は貨物列車が走れず、道路もずたずたでルートが確保できなかったからです。利便性が優先された交通網が都市に集中するようになっていて、それが寸断された場合の輸送ネットワークが準備されていませんでした。
 さらに、市町村の広域合併で職員の減少したことによる弊害もあったのではないかと個人的には考えています。A町とB町とC町が合併してXという市ができたとすると、A町の職員は避難所であるC町の公民館の場所を知らない場合もあります。そうであるならば、運送事業者と協定を結んで支援物資の輸送をやった方が迅速に物資・食料を供給できるのではないかと思います。
 農林水産省は国民に食料を安定的供給していく使命があります。しかし現在、日本の食料自給率は39%で、現実的には輸入と備蓄を組み合わせなければなりません。財政赤字が増える中で、世界人口は70億人を突破し、このまま外国から買い続けることができるのかという心配もあります。
 今回被災した東北3県は、日本にとって非常に重要な地域です。それは、何よりも日本の食料供給基地だからです。米だけで約120万トンを生産し、その量は日本の消費の約15%を占めています。養殖魚についても、宮城、岩手が中心ですが、約25%がこの3県で水揚げされています。
 この3 県を中心とする大震災による農林水産業の被害額は2兆4,000億円というとてつもない額ですが、なんとかこの地域のインフラと食料生産を復活させたいと考えています。皆さんには食べて、使って、応援してくださいとお願いしているところです。
 これからは農山漁村をどういう形で活性化していくかが、大きなテーマです。自然があり、食を生み出す地方の資源をもう一度見直して、再生する手立てはないか。今後の経済成長に向けて最後に残された日本の強みとも言える農山漁村をしっかり再生することで、未来の子どもたちに豊かな食、環境を残していきたいと思っています。